デイサービス開業に必要な資格・指定基準
デイサービス(通所介護)の経営者になるために特別な資格は必要ありませんが、デイサービスを開設・運営するためにはいくつかの条件があります。
- 法人格を有している
- 人員基準を満たしていること
- 設備基準を満たしていること
- 運営基準を満たしていること
詳しく説明していきます。
法人格を有していること
デイサービスは個人事業主では運営することができません。
法人として登記する必要があります。法人の種類は下記のとおりです。
- 営利法人:
- 株式会社: 資本を集めて営利を追求する法人形態で、株主の利益を最優先します。
- 合同会社: 比較的新しい法人形態で、柔軟な運営が可能です。
- 非営利法人:
- 一般社団法人:営利を目的としないが、活動に応じて利益を得ることができる法人です。
- 社会福祉法人: 福祉サービスを提供することを目的とした法人で、特に高齢者や障がい者支援に特化しています。
- 医療法人: 医療サービスを提供するための法人で、医療機関と連携することが多いです。
- 特定非営利活動法人(NPO法人): 特定の社会的課題の解決を目指す法人で、営利活動を行わず、収益は活動に再投資されます。
それぞれ設立にかかる時間や費用、条件などが異なりますので、自身の状況に合わせた法人格を選択しましょう。
人員基準を満たしていること
デイサービスを開設・運営するにあたって必要な職種や人数が定められています。
例えば、介護職員は利用者数が15人までは1人以上、利用者数が16人以上は「(利用者数-15人)÷5+1」以上必要です。そのほかに、生活相談員や看護職員、機能訓練指導員等の職種を配置します。 これらの職種は兼務が認められているものもあります。
職種名 | 配置基準 | 資格要件 |
---|---|---|
管理者 | 1人 | 特になし |
生活相談員 | 1人以上 | 社会福祉士 精神保健福祉士 社会福祉主事 |
看護職員 | 1人以上 | 看護師 准看護師 |
介護職員 | 利用者数が15人までは1人以上 利用者数が16人以上は「(利用者数-15人)÷5+1」以上 | 特になし |
機能訓練指導員 | 1人以上 | 理学療法士 作業療法士 言語聴覚士 看護師 准看護師 柔道整復師 あん摩マッサージ指圧師 はり師・きゅう師(※実務経験の要件あり) |
人員がそろっていない施設は開業ができず、もし基準を守らずに開業してしまった場合は法律違反として罰則が下されることもありますので、注意が必要です。
設備基準を満たしていること
デイサービス(通所介護)の設備基準には、開設・運営に必要な以下のような設備や備品が定められています。
- 食堂
- 機能訓練室
- 消火設備
- 静養室
- 相談室
- 事務室
- その他の設備(洗面台、トイレ、厨房など)
運営基準を満たしていること
デイサービスを適切に運営するための重要な決まりで、以下の4つの主要な項目が定められています。
- サービス提供に関すること:
- 利用者に対して提供するサービスの内容や方法、質に関する基準。
- 利用料に関すること:
- 利用者が支払うべき料金やその算定方法、透明性についての基準。
- 職員の勤務体制に関すること:
- 職員の配置や勤務時間、専門性に関する基準。
- 書類に関すること:
- 利用者の情報管理やサービス提供記録、報告書類などの整備に関する基準。
そのほか都道府県や自治体が条例で定めた基準もありますので、そちらもあわせて確認する必要があります。
デイサービス開業の流れ
- 法人を設立する
株式会社についてはこちらの記事で詳しく紹介しています。
- 事業計画書の作成
- 開業資金の調達
こちらの記事で詳しく紹介しています。
- 物件の契約
- 従業員を採用
- 内装工事
- 備品等の調達
- 自治体へ指定申請を行う
自治体によって届出を行う前に事前協議が必要な場合があります。自治体のルールを詳しく確認しておきましょう。 - 営業活動
事業所を紹介するパンフレット、名刺、HPなどを作成し、ケアマネジャーを招待して内覧会を行うなど。
デイサービス開業に必要な費用
店舗の設備や内装、立地によっても必要な資金は大きく変動しますが、一般的にデイサービスの開業に必要な資金は約1500万円程度と言われています。内訳として設備・備品購入費などの開業資金が約500万円、人件費や家賃などの運転資金が約1000万円です。
開業資金では、初期費用と運転資金を用意しておく必要があります。
居抜き物件を選ぶなどして店舗費用を工夫すれば初期費用を抑えることもできるでしょう。
また、最初の2カ月は介護給付金が満額支給されないため、資金計画をしっかり立てることが重要です。例えば、4月に事業所をオープンした場合、利用者から1割分の利用料が5月に支払われますが、介護給付負担の9割分は6月末に入金されます。
軌道に乗るまで3〜6ヶ月分の運転資金として開業費用と別に1000万円程度を確保しておくと、安心して営業を継続することができるでしょう。
運転資金についてはこちらの記事にも説明があるのでご参照ください。
デイサービス開業において、良い「居抜きテナント」に巡り合うことができれば、開業・創業時の設備投資額を大きく抑えることができます。
ただし、少し立ち止まって考えていただきたいのは、「居抜き」ということは、その前に同じ場所でデイサービスを経営していたオーナーがいて、様々な理由でうまくいかずに閉店に至ったという可能性があります。
オーナーにデイサービス経営のセンスがなかった・・・という理由でしたらまだ良い(というよりは挽回の余地がある)のですが、「利用者となる高齢者が少ない地域だった」「競合のデイサービスの事業所が乱立し、利用者の獲得が難しいエリアだった」という理由による撤退の可能性もあります。
その見極めを外部から行うことは難しいのですが、弊社にご相談いただければ、テナントの選定段階から立地のアドバイス等も含めて行わせていただいております。お気軽にご相談ください。
なお、スケルトン物件とは、内装は一切施されておらず、コンクリートはそのままで配管や配線もむき出しになっているテナントです。オーナーが一から自由に内装設計やデザインを行える長所・メリットがありますが、デメリットとして内装費用が多額になります。そのため、一般的にスケルトン物件は十分な自己資金も必要となってくるでしょう。
資金調達について
一般的にデイサービス開業に必要資金のすべてを自己資金でまかなうことは難しい場合が多いです。また、開業後には予想外の支出が出てくることも念頭に置いておきましょう。
デイサービス開業に限った話ではないのですが、起業資金のための資金調達の方法には、以下のような方法があります。
- 全額自己資金で賄う。
- 他人(家族・親族を含む)から出資を受ける。
- 日本政策金融公庫等の金融機関から創業融資を受ける。
このうち、自己資金で開業できればベストなのですが、デイサービス開業に必要となる資金を全額自己資金で用意できる方は少数だと思います。
また、人脈や家族の力を利用し、「他人からの出資」によって開業資金を賄える方もかなりの少数だと思います。
現実的には、日本政策金融公庫等の金融機関や信用金庫からの創業融資を検討することが多くなると思います。
それでは、具体的に融資を受ける方法について見ていきましょう。
利用できる融資先の例
下記は、創業や開業時に利用可能な融資先の例です。
【日本政策金融公庫】
創業・継承、設備投資、研究開発、海外展開等、様々な事業目的に合わせた融資制度がある機関です。特に「新規開業資金」は創業融資の制度としてよく利用されています。詳しくは、こちらをご覧ください。
日本政策金融公庫の融資についてはこちらの記事で詳しく紹介しています。
【保証協会付き融資】
信用保証協会(東京都の場合)が保証人となって金融機関から融資を受ける制度です。実際の融資は信用金庫や信用組合が行い、それを保証協会が連帯保証してくれる形です。
詳しくは、こちらをご覧ください。
【独立行政法人福祉医療機構】
福祉や医療業界に特化した融資を行っており、デイサービス事業でも利用できます。福祉器具の購入だけでなく、建物や土地取得時にも使えるなど、幅広い用途に対して融資を行っています。詳しくは、こちらをご覧ください。
まとめ
今回は、「デイサービス開業」について、スポットをあてて見てきました。
起業・創業時の融資を含め、弊社では多くの融資サポート実績があります。また、創業融資代行サポート(CPA)では、デイサービス開業や訪問介護事業所開業を含む、多くの事業主様から、日本政策金融公庫の創業融資や創業支援のご相談を承っており、多くのノウハウや情報を持っております。まずはお気軽にご相談ください。お客様にとって最適なアドバイスを行わせていただきます。