ホテルなどの宿泊費が増加する中で、需要が高まっているのが民泊です。個人でも運営が可能なため、起業を考える人も増えているのではないでしょうか。
今回は、「民泊の開業の流れや開業費用」などを紹介します。これから開業を目指す方々にとって、少しでも役立つ情報を提供できれば幸いです。
弊社でもサポートを行っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
目次
民泊とは?
民泊とは、個人が自宅や所有する物件を、旅行者などに短期間貸し出す宿泊施設の形態を指します。
一般的に、ホテルや旅館といった商業施設とは異なり、個人が自分の住居や空き部屋を提供する形態です。民泊は、宿泊料金が比較的リーズナブルであることや、現地の生活に触れながら滞在できる点が魅力とされています。ただし、民泊を運営する際には、地域によっては法律や規制があるため、適切な許可や手続きを踏む必要があります。
民泊の業態
民泊の業態には主に以下の3つがあります。
民泊新法(住宅宿泊事業法)による民泊
住宅を使って民泊を提供することが可能です。年間の営業日数が180日以内という制限が設けられています。
メリット
- 簡単な登録手続き
住宅を提供するための登録が比較的簡単で、運営の許可が得やすいです。 - 低コストでのスタート
自宅の空き部屋やマンションの一部を利用するだけで民泊を運営できるため、初期費用が低く、手軽に始めやすいです。 - 設備の基準がシンプル
施設にはキッチン、トイレ、お風呂、洗面台の「4点セット」があれば基本的には十分で、設備の追加工事が不要な場合が多いです。
デメリット
- 営業日数制限
年間180日以内の運営制限があり、フルタイムでの運営が難しいです。 - 近隣住民への通知義務
近隣住民への事前通知が義務付けられており、トラブルを防ぐための対応が求められます。 - 自治体の規制
地域によってはさらに制限があり、全ての地域で運営が許可されるわけではありません。また、住宅宿泊管理業者への委託が必要となる場合があります。
旅館業法
旅館業法における簡易宿所として営業する業態で、営業日数の制限がありません。
旅館業法では宿泊施設を次の2つの形態に分けています。
- 旅館・ホテル営業
1部屋を家族や友人などのグループで宿泊させる形態です。
(例:ビジネスホテルや旅館) - 簡易宿所営業
1部屋を複数のグループが宿泊する形態です。
(例:カプセルホテルやゲストハウス)
それぞれの形態で求められる設備や要件が異なるため、物件の状態や周辺地域のニーズに合った業態を選ぶことが大切です。
メリット
- 営業日数の制限がない
営業日数に制限がなく、フルタイムでの運営が可能です。 - 法人化できる
法人を設立して、規模を大きくすることが可能で、事業展開がしやすいです。
デメリット
- 建物の用途変更
旅館業法に基づく施設として営業するためには、建築基準法上の建物の用途を「ホテルまたは旅館」に変更する必要があります。これにより、住宅とは異なる構造や設備が求められるため、改装が必要になる場合があります。 - 営業許可の取得
営業許可を得るためには、都道府県ごとの申請が必要です。また、施設が法律で定められた基準を満たさなければ許可が下りません。加えて、旅館業法の許可が下りない場所もあるため、立地選びには慎重な判断が求められます。 - フロントやスタッフの常駐
施設内にフロント(玄関帳場)を設置するか、近隣にフロント機能を持つ管理事務所を設置する義務があります。そのため、フロントやスタッフの常駐が求められ、運営面での手間とコストが増えます。
国家戦略特区法による民泊(特区民泊)
指定された国家戦略特区内でのみ運営が可能です。
この業態は、最低宿泊日数が2泊3日以上という制限があり、短期間の宿泊には対応できません。また、特区民泊は地域ごとに異なる規制が適用されるため、運営を行う地域のルールに従う必要があります。
メリット
- 営業日数に制限がない
年間を通して365日の営業が可能です。 - フロントが不要
- 建物の用途変更が不要
建物の用途を「住宅」のままで宿泊業を営むことができます。
デメリット
- 要件を満たす必要がある
特区民泊を運営するには、厳格な要件を満たす必要があります。主な要件には以下の内容が含まれます。
・滞在日数の制限(大阪市では2泊3日以上)
・一居室の床面積が25㎡以上であること
・宿泊者名簿の設置と滞在者情報の記録
・周辺住民への事前説明と苦情対応体制の確保
・消防法や建築基準法への適合
施設の構造や設備、運営方法に関しても細かい基準が定められており、これらをクリアしないと運営ができません。 - 宿泊日数の制限
2泊3日以上という宿泊日数の制限があります。 - 特定の地域のみが対象
東京都大田区や大阪府大阪市など特定の地域のみが対象で、対象地域でないとこの形態では開業できません。
民泊を開業するための法律には複数の種類が存在しています。それぞれに必要な条件、メリットとデメリット、必要な手続きが異なるので、注意しましょう。
民泊開業の流れ
民泊開業の流れは下記のとおりです。
- 民泊の形態とコンセプトを決める
・運営形態の選定(住宅活用民泊、特区民泊、ゲストハウスなど)
・各形態に適用される法律や基準を確認
・コンセプトを決める(外国人向け、テーマ型、高級志向など) - 立地・物件を選ぶ
・物件選定(自宅利用か新規物件購入か)
・立地の決定(観光地、郊外など、コンセプトに合った場所) - 個人事業主・法人として開業する
・開業形態の選定(個人事業主または法人)
・それぞれのメリット・デメリットを考慮 - 物件を用意して届出をする
・保健所への申請
・必要書類の準備と提出 - 立ち入り検査を受ける
・保健所職員による施設の立入検査を受ける - 届け出が受理される
・申請後約2週間で審査完了、届出受理 - 開業のための準備
・宣伝活動(オンライン予約サイトへの掲載、SNS活用など)
・アメニティや備品の準備(ベッド、タオル、キッチン用品など) - 民泊開業
・準備が整い次第、営業
・2ヶ月に1度のペースで都道府県に定期報告をする義務があるため注意
民泊の開業資金について
民泊の開業資金は物件を取得の有無、リフォームの規模によって金額は大きく異なります。ここでは民泊の開業に必要な費用項目を紹介します。
- 物件取得にかかる費用
・物件の購入費用(立地や広さによって大きく異なる)
・物件購入にかかる諸経費(登記費用、税金など)
賃貸の場合
・事前にオーナーの許可を得る必要がある
・賃貸契約の条件(敷金、礼金、契約期間など) - リフォーム費用
- 運営費用
・家具や家電の購入費用(ベッド、冷蔵庫、エアコンなど)
・アメニティや消耗品(タオル、シャンプー、備品など) - 広告宣伝費
予約サイトやSNS広告にかかる費用
ウェブサイトやリスティング広告の運用費用
- 自宅や別荘を民泊として利用する
- 初期投資を抑えるため、リフォームを最小限に抑える方法を検討
全体的な資金調達方法も考慮して、開業資金を準備することが重要です。
開業する時の資金調達方法について
次に民泊を開業する際の資金調達方法について紹介します。民泊の開業資金のための資金調達の方法には、以下のような方法があります。
- 自己資金
自身が所有する資産を利用する資金調達方法です。自己資金が多いと多くの融資を受けやすくなるというメリットもあります。
- 親・親戚・友人に貸してもらう。
公式な手続きや審査が不要なため、迅速に資金を調達できるほか、低金利または無利息で借りられることが多く、返済期間についても柔軟に設定できる場合が多いです。 - 日本政策金融公庫等の金融機関から創業融資を受ける。
日本政策金融公庫の融資についてはこちらの記事で詳しく説明しています。
- ベンチャーキャピタル
将来成長が見込めるベンチャー企業やスタートアップ企業の将来の成長を見込んで投資する組織のことです。資金を返済する必要はありませんが、企業が成長や上場したときに株式を売却することで資金を回収します。 - エンジェル投資家
将来成長が見込めるベンチャー企業やスタートアップ企業に出資する個人投資家のことです。投資したお金を企業から直接回収することはせず、将来そのベンチャー企業が株式上場した際の出資金のキャピタルゲインを得ることを目的としている場合が多いです。 - 補助金を申請する
おすすめの補助金については、後述の項目で詳しくご紹介しています。申請条件や対象となる時期は補助金ごとに異なるため、開業後に申請することも検討しましょう。
このうち、自己資金で開業できればベストなのですが、必要となる資金を全額自己資金で用意できる方は少数だと思います。
また、人脈や家族の力を利用し、「他人からの出資」によって開業資金を賄える方もかなりの少数だと思います。
現実的には、日本政策金融公庫などの金融機関や信用金庫からの創業融資を検討することが多くなると思います。
それでは、具体的に融資を受ける方法について見ていきましょう。
融資先の例
下記は、創業や開業時に利用可能な融資先の例です。
【日本政策金融公庫】
創業、継承、設備投資、研究開発、海外展開など、様々な事業目的に合わせた融資制度がある機関です。特に創業時は積極的な感じが見受けられます。
【保証協会付き融資】
信用保証協会が保証人となって金融機関から融資を受ける制度です。
民泊運営におすすめの補助金
民泊運営には多額の初期投資や運営費用が必要となるため、補助金の利用が大きな助けとなります。
弊社でも補助金の申請サポートを行っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
1. 中小企業省力化投資補助金(最もおすすめ)
中小企業省力化投資補助金は、人手不足に直面している中小企業がIoTやロボットなどの効果的な汎用製品を導入することで、企業の付加価値や生産性の向上を図ることを目的としています。
製品カタログの中から製品を購入し、購入した代金の半額を補助するというものです。
中小企業省力化投資補助金は、民泊運営にも非常に適しており、以下のような特徴があります。
- 従業員数5人以下: 補助率1/2、上限200万円(大幅な賃上げの場合は300万円)
- 従業員数6~20人以下: 補助率1/2、上限500万円(大幅な賃上げの場合は750万円)
- 従業員数21人以上: 補助率1/2、上限1,000万円(大幅な賃上げの場合は1,500万円)
- 小規模な事業者でも利用しやすい。
- 採択率が高いと予想されている。
- 補助金の上限金額が高く、宿泊施設に関連した機器の複数台導入が可能。
- 申請手続きが比較的容易。
現時点で公開されている民泊向けの導入可能機器には、清掃ロボット、自動チェックイン機、スチームコンベクションオーブンなどがあります。
これらの機器を導入することで、民泊の運営をさらに効率化することが可能です。
2. 小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者が経営の安定化や強化を図るための補助金です。特に小規模な民泊には非常に活用しやすい補助金の一つです。
- 補助率2/3、上限50~200万円
- 採択率が高い。
- 用意すべき書類が少なく、事業者の負担が少ない。
- 規模が小さめな宿泊施設にとって有効な支援策。
小規模事業者持続化補助金は、中小企業省力化投資補助金に比べて補助金額が小さいため、補助金の活用計画をしっかりと立てることが重要です。
3.新事業進出補助金
また、今後登場する見込みである新事業進出補助金というのも狙い目かもしれません。
新事業進出補助金はポスト事業再構築補助金として、2025年から公募が開始される予定の補助金です。
まとめ
今回は、「民泊開業」について、スポットをあててみてきました。
民泊開業を検討する場合、事前にしっかりとした計画を立て、必要な手続きや開業費用を確認しておくことが大切です。適切な準備を行うことで、競争の激しい市場の中でも安定した経営が可能となります。将来性の高いビジネスであるため、積極的に取り組む価値があります。
また、民泊開業にあたっては資金調達が必要な場合もあります。融資を受けるためのサポートが必要な場合は、ぜひ弊社にご相談ください。起業を支えるための専門的なアドバイスを提供いたしますので、お気軽にお問い合わせください。
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駒田会計事務所 代表
税理士・公認会計士 駒田裕次郎
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