2024年3月に、公庫の「新創業融資制度」が廃止となり、それにともない、4月より「新規開業資金」が「新創業融資制度」の要素を引継ぐ形で一部拡充されました。詳しくはこちらの記事で紹介しておりますので、参考にしていただければ幸いです。
日本政策金融公庫が実施している新創業融資制度を利用したいものの、自己資金がないため申込めないと考えていませんか。結論から述べると、新創業融資制度は自己資金なしでも申し込めることがあります。このページでは、自己資金なしで申し込める条件と自己資金が不足した場合の対処法を紹介しています。気になる方は参考にしてください。
自己資金とは?日本政策金融公庫は自己資金なしでも借りられる?
創業時に幅広く利用されている日本政策金融公庫の融資制度が新創業融資制度です。新創業融資制度は自己資金なしでも利用できるのでしょうか。
新創業融資制度の利用条件
新創業融資制度は、これから事業を始める方や事業を始めてから税務申告を2期終えていない方が利用できる融資制度です。主な利用条件は以下のようになっています。
・雇用創出などの要件
雇用の抄出を伴う事業を始める方、勤務先と同じ業種の事業を始める方、認定特定創業支援等事業(産業競争力法)を受けて事業を始める方など
・自己資金要件
これから事業を始める方、事業を始めてから税務申告を1期終えていない方は、創業時に創業資金総額の10分の1以上の自己資金を確認できる
自己資金要件によると、これから事業を始める方、税務申告を1期終えていない方は、創業資金総額の1割以上の自己資金がないと新創業融資制度を利用できないと考えられます。
自己資金なしでも利用できるケースはある
ただし、創業資金総額の1割以上の自己資金がなければ、新創業融資制度を利用できないわけではありません。自己資金要件には、以下の一文も記載されています。
「現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方」、「産業競争力強化法に定める認定特定創業支援等事業を受けて事業を始める方」等に該当する場合は、本要件を満たすものとします(注2)。
出典: 日本政策金融公庫:新創業融資制度
以上の条件などに該当する方は、自己資金なしでも新創業融資制度を利用できる可能性があります。ちなみに、特定創業支援等事業とは、市区町村と創業支援等事業者が連携して実施している「経営・財務・人材育成・販路開拓の知識が身につく創業支援の取り組み」です。同支援を受けると、新創業融資制度の自己資金要件が撤廃されるほか、登録免許税の軽減措置を受けられます。
補足:自己資金とは
ここまで、新創業融資制度における自己資金の必要性について解説してきましたが、自己資金とはどのようなお金なのでしょうか。人によりとらえ方が異なる可能性があるので、改めて整理します。自己資金の最も簡単な説明は、「誰にも返さなくてよいお金」です。例えば、自身の給料をコツコツ貯めて作った資金などが該当します。第三者から借りたお金は、自己資金といえません。
自己資金が不足したら?
日本政策金融公庫が実施している新創業融資制度は、創業資金総額の1割にあたる自己資金を用意すれば、あるいは条件に該当すれば自己資金なしで利用できます。ただし、一般的に、融資額は自己資金に比例すると考えられています。自己資金が不足する場合、どうすればよいのでしょうか。
融資限度額の目安
一般的な融資限度額は、自己資金の3~4倍程度とされています。つまり、自己資金が100万円であれば300~400万円程度、200万円であれば600~800万円程度、300万円であれば900~1,200万円程度が融資限度額と考えられるのです。新創業融資制度の融資上限額は3,000万円ですが、誰でも3,000万円の融資を受けられるわけではありません。当然ながら、融資額は用意している自己資金額に影響されます。
自己資金が不足した場合の対処法
希望する融資限度額に対し自己資金が不足していると考えられる場合は、受けられる融資額に合わせて事業計画に変更することが勧められます。あるいは、すでに事業に使ったお金とみなし自己資金として認めてもらうこと、贈与契約書を作成したうえで親などから贈与を受けて自己資金を増やすことなども考えられます。ただし、贈与されたお金は自己資金として認められない恐れがあります。贈与者の経済状況によっては、返還を求められることがあるからです。自己資金が不足する場合は、いずれかの対策を講じるとよいかもしれません。以上のほかでは、説得力のある事業計画書を作成しアピールする、起業したい業種での経験をアピールするなどでリカバリーできることもあります。
自己資金になるもの・ならないもの
手元にあるお金は自己資金になるものとならないものがあります。どのようなお金が自己資金になるのでしょうか。
自己資金になるものは、「返さなくてよい出所のはっきりしたお金」です。具体的には、以下のお金などが自己資金としても認められます。
・貯蓄の過程が通帳などで確認できるお金
・生命保険の解約返戻金など
・親や兄弟から贈与されたお金
・資産を売却したお金(売却の経緯がわかるもの)
反対に「返さなければならないお金」「出所のわからないお金」は自己資金として認められません。具体的な例は以下の通りです。
・タンス預金
・家族や知人などから借りたお金
・他の金融機関から融資されたお金
・通帳に入金されている出所を説明できないお金
いずれ返さなければならないお金やどのように貯めたかわからないお金は、基本的に自己資金と認められません。
自己資金に関する注意点
最後に、自己資金に関する知っておきたい知識を紹介します。
見せ金は厳しくチェックされる
自己資金を多く見せるため、一時的に借りたお金を見せ金といいます。返済が必要なお金なので見せ金は自己資金に含まれません。ばれないだろうと思うかもしれませんが、日本政策金融公庫などは通帳をチェックするためすぐにばれてしまいます。見せ金で自己資金を一時的に増やすことは控えましょう。
資金を移動させるときは注意
自己資金を増やすため、自分で貯めたお金をひとつの口座にまとめることがあるはずです。創業前にまとまったお金を移動させると、見せ金だと誤解されることがあります。まとまったお金を移動させるときは、どのように用意したものか説明できるように資料などを用意しておきましょう。
日本政策金融公庫の融資制度を利用するときは自己資金を用意
新創業融資制度をはじめとする日本政策金融公庫の融資制度を利用するには、基本的に自己資金が必要です。自己資金なしでも利用できるケースはありますが、融資額は少なくなることが予想されます。自己資金はできるだけ多く用意するほうがよいでしょう。自己資金が不足する場合は、事業計画を変更する、親などから贈与を受けるなどの対策が考えられます。有効な対策が見当たらない場合は、創業融資の専門家に相談するとよいかもしれません。万全の対策をとったうえで、日本政策金融公庫の融資制度に申込みましょう。
創業融資代行サポート(CPA)では、公庫の創業融資を含め、創業時の資金調達を含む各種ご相談に乗らせていただいております。まずはお気軽にお問い合わせください。