事業を新たに始められる方が資金調達をする際、日本政策金融公庫(以下「公庫」)からの融資をご検討されることはよくあることかと思います。
今年そんな公庫の融資制度に大きな変更がありました。
2024年3月に、公庫の「新創業融資制度」が廃止となり、それにともない、4月より「新規開業資金」が「新創業融資制度」の要素を引継ぐ形で一部拡充されたのです。
今回はこの公庫の制度の変更に注目してみていきたいと思います。
これまでの創業期の融資
これまで事業者の方が、公庫の創業融資として利用していた多くの融資は「新創業融資制度」と「新規開業資金」を併用したものでした。
「新創業融資制度」は単体で利用できない制度であったため、この二つを併用することで、「無担保・無保証」にて融資を受けることが可能となっていました。
新創業融資制度 | 新規開業資金 | |
制度の対象 | ・新たに事業を始める方 ・事業を始めてから税務申告を2期終えていない方 | ・新たに事業を始める方 ・事業を始めてからおおむね7年以下の方 |
融資限度額 | 3,000万円(うち運転資金1,500万円) | 7200万円(うち運転資金4,800万円) |
返済期間 | 各融資制度の返済期間以内 | 設備資金:20年以内(据置期間:2年以内) 運転資金:7年以内(据置期間:2年以内) |
利率 | 2.46~2.85%(基準利率) | 日本政策金融公庫が定める基準利率。所定の要件に該当する場合は特別利率を適用。 |
担保・保証人 | 原則不要 | 原則必要(応相談) |
要件 | 創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金があること等 |
これからの創業期の融資
それでは「新創業融資制度」が廃止され、「新規開業資金」の内容が拡充されることによりどのような点が変わったのか例をもとに見ていきましょう。
例:新規開業資金を、無担保・無保証人で、新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を2期終えていない方が利用する場合
上記図は、左はこれまでの「新創業融資制度」と「新規開業資金」を併用した場合の融資の内容、右は新しい「新規開業資金」の内容となっています。
ここから分かる大きな変更は3つです。
変更ポイント①:自己資金要件の撤廃
「新創業融資制度」と「新規開業資金」を組み合わせて利用する場合には創業資金総額の10分の1以上の自己資金(事業に使用される予定の資金を指す)を用意する必要がありました。
今回の変更でその自己資金を用意できなくても融資に申込み出来るようになりました。
変更ポイント②:融資限度額の拡大
これまで「新創業融資制度」と「新規開業資金」を組み合わせて利用する場合であれば、7,200万円(うち運転資金4,800万円)ではなく3,000万円(うち運転資金1,500万円)が融資限度額となっていました。
しかしながら、今回「新創業融資制度」の廃止され「新規開業資金」のみを利用することと なり、実質融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)に拡大されました。
なお、「新規開業資金」では新たに事業を始める方または事業開始後税務申告を2期終えていない方は、原則として無担保・無保証人にて融資を受けることが出来るようになっています。
変更ポイント③:返済期間の延長
「新規開業資金」の返済期間が延長されました。
設備資金であれば20年以内(据置期間5年以内)とされ、運転資金は以前7年以内でしたが原則10年以内(据置期間5年以内)と変更になりました。長期的な返済計画の相談が可能となりました。
新しい「新規開業資金」についてはこちら:日本政策金融公庫:新規開業資金
制度の変更を受けて
今回の制度変更は創業期に融資を検討する上ではプラス材料となる変更かと思われます。
創業期に資金に余裕を持つ事が出来れば、スムーズに事業を軌道に乗せることが出来るかもしれません。ぜひ一度融資を検討してみて下さい。
ただし、注意点もあります。今回の制度の変更はメリットもあり融資に申し込みやすくなりましたが、融資を受けるのが簡単になったかといえば、そうとも言いきれないと思われます。
たとえば今回自己資金の要件は撤廃されましたが、自己資金なしで融資申請が通るかというと、中々難しい傾向があります。
日本政策金融公庫で創業融資をスムーズに受けるためにはポイントが当然あります。そのため融資に詳しい専門家に相談してみるのも一つの手かもしれません。
創業融資 代行サポート(CPA)では、多くの事業主様から、日本政策金融公庫等の創業融資のご相談を承っております。そこで得た多くのノウハウや情報を活用し、公庫で融資を受けるためのサポートを行なっております。まずはお気軽にご相談ください。万全の態勢で審査に挑むことができるようになります。