事業を立ち上げるときは、小規模からスタートするとリスクを抑えることができます。
「起業していきなり会社を設立するのはハードルが高い」と感じる場合には、まず個人事業主から始めて、事業が軌道に乗ってから法人化を検討するのも1つの方法です。
この記事では、個人事業主での起業に興味がある人に向けてのメリット・デメリット、起業した場合に注意すべきことなどについて解説します。
個人事業主として起業するメリット
開業手続きが簡単で費用がかからない
個人事業は法人設立に比べて開業手続きがシンプルです。税務署や都道府県税事務所、市町村に開業届を提出するだけですぐに開業できます。費用もかかりません。
法人の設立では登録免許税などの費用が必要です。また、定款の作成や登記するまでには早くても1週間、長ければ1ヶ月超かかる人もいます。
副業や週末起業として個人事業主になるという方法もあります。副業からの起業や週末起業についてはこちらの記事でも説明がありますのでご参照ください。
税務申告が簡単
個人事業では毎年、確定申告を行います。青色申告をすることで、所得控除や特別控除などの税制優遇を受けられます。また、事業に必要な経費を控除できるため、節税が可能です。
法人では法人税の申告書を作成しますが、税理士に依頼せずに作成するには相当の知識が必要になります。個人事業より作成の手間もかかりますので、税理士に申告書の作成を依頼する法人は多いです。個人事業でも税理士に依頼する人は少なくありませんが、法人税の申告に比べて税理士の依頼費用は安いことが多いようです。
利益が少ないうちは税負担が少ない
個人事業では所得税、法人では法人税を支払いますが、利益(所得)が少ないうちは法人より個人事業の方が税金は少なくなります。事業が軌道に乗るまでは個人事業で、利益が増えてきたら個人事業から法人化する人も多いようです。
利益がいくらまでなら個人事業が有利かは、それぞれの個人や事業の状況によって異なりますので一概に示すことはできません。税理士への相談をおすすめします。
手続きなどの事務負担が少ない
個人事業では、事業主は国民年金と国民健康保険に加入することが多いです。手続きや事務の負担はあまりありません。
法人を設立して社長になると、会社から自分に給与を払います。給与計算を行い、所得税や健康保険(協会けんぽ)や厚生年金などの源泉徴収を行って納付しなければなりません。年末調整も行います。
個人事業で自分一人の場合、給与を支払うこともなく、給与計算などの事務負担はありません。収入から必要経費を引いた金額が所得(利益)となります。
個人事業主として起業するデメリット
社会的な信用度に劣る
個人事業は法人のように登記しません。また、法人よりも簡単に設立や運営ができる分、社会的な信用で法人よりも劣ります。中には個人との契約を避け、法人との取引を希望する企業もあります。
人材採用で不利
人材を採用する場合、採用募集活動において個人事業は法人より不利になりがちです。法人は厚生年金や健康保険の加入が義務ですし、求職者には個人事業は小さい組織であるイメージがありますので、法人に比べて人気がありません。
融資を受けにくい
個人事業は法人に比べて金融機関からの融資を受けにくいとされます。法人は個人と別人格で会計も別であるのに対し、個人事業は一体ですから、事業資金と個人の生活費の境目があいまいになりがちです。運転資金の融資の審査は厳しくなりやすいです。金融機関から評価されるには、金融機関の口座について、事業用と生活費の預金口座を分け、経理をしっかり行いましょう。
事業の継続性が弱い
個人事業主は、事業主本人がいなくなると事業が終了してしまうことが一般的です。法人と異なり、事業を後継者に引き継ぐための仕組みが難しく、事業の継続性が低いことがあります。
利益が多いと税負担が重い
所得(利益)が増えると税額は法人よりも多くなります。所得税は累進課税で、所得金額が増えるごとに税率は上がります。また、個人事業税も課せられるようになります。
個人事業主になるうえでの注意点
個人事業主として開業するとなった場合、注意点として以下のようなものが挙げられます。
失業手当がもらえなくなる
失業手当は、仕事を探しているけれどまだ見つからないことが受給要件になっています。個人事業主になると、仕事を探している状態ではなくなるため、失業手当はもらえなくなります。会社員として雇用されていた人が、個人事業主になる際には注意しましょう。
もっとも、個人事業主になっても再就職手当の支給は受けられます。再就職手当は、基本手当の支給残日数が、所定給付日数の3分の2以上の場合は基本手当日額(上限額あり)に支給残日数を乗じた額の70%相当額、3分の1以上の場合は60%相当額が支給されますので、開業するのであれば、早期に開業した方が給付率は高まります。
配偶者の扶養から外れる可能性がある
配偶者の扶養に入っているケースでは、個人事業主になることで被扶養者から外れる場合があります。
基本的に、事業収入から経費(※)を差し引いた金額が130万円未満であれば被扶養者の収入要件を満たしますので、自分で保険料を納付する必要はありません。
130万円以上となると、自分で保険料を支払うことになります。
健康保険組合によって、被扶養者と認定されるための基準の運用が異なる場合がありますので、配偶者の加入する健康保険組合に確認しましょう。
個人事業主が法人やフリーランスと違うのは?
またこちらの記事では法人・個人事業主・フリーランスの違いについても説明していますので、ご参考ください。
個人事業主として起業するために必要な資金は?
起業に必要な資金は、事業内容などによっても大きく異なりますが、一般的に必要資金のすべてを自己資金でまかなうことは難しい場合が多いです。また、起業後には予想外の支出が出てくることも念頭に置いておきましょう。
こちらの記事でも個人事業主の開業・創業について説明していますのでご参考ください。
個人事業主での起業に限った話ではないのですが、起業資金のための資金調達の方法には、以下のような方法があります。
- 全額自己資金で賄う。
- 他人(家族・親族を含む)から出資を受ける。
- 日本政策金融公庫等の金融機関から創業融資を受ける。
このうち、自己資金で開業できればベストなのですが、必要となる資金を全額自己資金で用意できる方は少数だと思います。
また、人脈や家族の力を利用し、「他人からの出資」によって開業資金を賄える方もかなりの少数だと思います。
現実的には、日本政策金融公庫等の金融機関や信用金庫からの創業融資を検討することが多くなると思います。
自己資金の説明はこちらの記事で詳しく説明しています。
利用できる融資先の例
下記は、創業や開業時に利用可能な融資先の例です。
【日本政策金融公庫】
創業・継承、設備投資、研究開発、海外展開など、様々な事業目的に合わせた融資制度がある機関です。
【保証協会付き融資】
信用保証協会(東京都の場合)が保証人となって金融機関から融資を受ける制度です。
まとめ
今回は、「個人事業主としての起業」について、スポットをあてて見てきました。創業時の融資を含め、弊社では多くの融資サポート実績があります。
また、創業融資代行サポート(CPA)では、個人事業主からの起業を含む、多くの事業主様から、日本政策金融公庫の創業融資や創業支援のご相談を承っており、多くのノウハウや情報を持っております。まずはお気軽にご相談ください。お客様にとって最適なアドバイスを行わせていただきます。