日本政策金融公庫(以下「公庫」)で創業融資を検討されている事業者様にスタートアップ支援について解説します。この記事を見て、少しでも参考にしていただければ幸いです。
今年の4月に「スタートアップサポートプラザ」が東京都・名古屋市・大阪市・福岡市の4都市で新設されました。政府は、2022年 11月に「スタートアップ育成5か年計画」を策定し、スタートアップへの投資額を 10倍にすることを目標に掲げています。
また、公庫はスタートアップに対し、融資制度を拡充し、一層の資金支援を行っていくと発表しています。
目次
日本政策金融公庫のスタートアップ支援の全体像
日本政策金融公庫の資料によると、スタートアップ支援の全体像は以下の通りです。
まず、企業の成長ステージは、「シード」「アーリー」「ミドル」「レイター」という4つの時間軸に分類されます。
このうち、創業して間もない時期である「シード(創業準備期)」は「魔の川(Devil River)」とも呼ばれ、研究開発・試作品のリリースを行うステージです。この時期は準備した資金をすり減らしながら研究開発・試作品のリリースに打ち込みます。
研究開発・試作品の目途が立ち、製品をリリースできるようになるまでのステージが「アーリー(事業立ち上げ期)」であり、死の谷(TheValley of Death)とも呼ばれます。
やっと製品リリースができる段階となりますが、この時期には公庫(国民生活事業)の新規開業資金等で調達した当初資金も底をつき始め、多くのスタートアップがこの段階で姿を消します。
資金的にこの一番しんどい「アーリー」から「ミドル」という急成長期(売上増大のための人員・設備の追加)に移行するために必要な資金の提供を、これまで公庫の融資制度ではカバーできていなかったことが1つのスタートアップ支援の課題となっていました。
そこで、日本政策金融公庫(中小企業事業)のスタートアップ支援資金等の制度を設けて、スタートアップが「アーリー」から「ミドル」を乗り越え、「レイター(経営基盤確立期)」まで成長し、安定した売上を確保やIPOを目指せるようにしました。

各スタートアップサポートプラザの所在地等
日本政策金融公庫で、は以下の拠点に「スタートアップサポートプラザ」を設け、スタートアップ支援資金等についての相談を承っている、とのことです。
公庫のスタートアップ向け融資制度の拡充について
日本政策金融公庫では、スタートアップ向けの融資制度を以下の通り、拡充しました。
小規模事業者向け(国民生活事業)
新たに事業を始める方または事業開始後税務申告を2期終えていない方の無担保・無保証人で利用する場合の融資制度(旧:新創業融制度)
※2024年4月1日から拡充予定
例:新規開業資金を、無担保・無保証人で、新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を2期終えていない方がご利用いただく場合

新規開業資金の条件や内容については、こちらの記事で詳しく紹介していますのでぜひご確認ください。

中小企業向け(中小企業事業)
スタートアップ支援資金については、2024年2月16日拡充済みとなります。

スタートアップ支援のポイント
スタートアップ支援のポイントとして、以下の内容が挙げられます。
- 小規模事業者向けに、新たに事業を始める人、または事業開始後税務申告を2期終えていない人が無担保・無保証人で利用する場合、融資限度額が従来の3,000万円から7,200万円まで引き上げ
- 創業時に創業資金総額の10分の1以上の自己資金があることなどの要件が撤廃
- 事業の運転資金の返済期間についても従来の7年以内を10年以内とし、利息だけを払い込む据置期間も最大2年から5年に延長
これらの変更により、創業者や新規事業者は、より柔軟で手厚い支援を受けやすくなり、事業のスタートアップをよりスムーズに進めることができるようになります。
日本政策金融公庫のスタートアップ支援のポイント(本音のところ)
では、実際のところ、どのような会社でも日本政策金融公庫のスタートアップ支援を利用することができるものでしょうか?
この点、私見となりますが、以下のように考えます。
- 小規模事業者向けに、新たに事業を始める人、または事業開始後税務申告を2期終えていない人が無担保・無保証人で利用する場合、融資限度額が従来の3,000万円から7,200万円まで引き上げ
⇒ 元々、創業融資において融資限度額が3,000万円ではありましたが、実際に3,000万円を創業融資で調達できることは少なく、今回も融資限度額が7,200万円に拡充したものの、誰もが上限額を狙える訳ではないと考えた方が無難だと思います。
- 創業時に創業資金総額の10分の1以上の自己資金があることなどの要件が撤廃
⇒ こちらも同じく、自己資金要件が撤廃はされたものの、「自己資金がなくても良い」ということではないという見解です。やはり、自己資金は少ないよりはあった方が良いと考えた方が良いでしょう。

- 事業の運転資金の返済期間についても従来の7年以内を10年以内とし、利息だけを払い込む据置期間も最大2年から5年に延長
⇒ こちらについては返済期間を柔軟に決定していただけるようになったと考えられますが、例えば運転資金について、信用度の高い場合は10年返済を認めてもらえるかもしれませんが、信用力が低い場合には7年や5年など、より短い審査結果となる可能性がある点に留意した方が良いと思います。

まとめ
今回は、日本政策金融公庫のスタートアップ支援について、スポットをあててみてきました。スタートアップ企業にとっては、追い風となる支援と言えますね。
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駒田会計事務所 代表
税理士・公認会計士 駒田裕次郎
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