開業を考える方にとって、金融機関からの融資を受けることは大きな課題となることが多いでしょう。特に、自己資金が少ない場合、融資を受けるハードルが高いと感じる方も少なくありません。
自己資金なしで創業融資を受けることは、確かにハードルが高いです。
しかし、適切な準備と戦略があれば、不可能ではありません。
今回は、自己資金が少ない方でも創業融資を利用できる方法と、その際の注意点について紹介します。

監修:駒田 裕次郎
駒田会計事務所【コマサポ】代表
【来歴】大手監査法人の経験を活かし、創業支援・補助金サポートを中心とする「駒田会計事務所」を東京・渋谷に設立。資金調達や事業計画の作成、税務や経営相談まで顧客に寄り添うきめ細やかなサポートを提供。
【実績】創業融資・補助金の支援実績は、累計3,000件以上(2025年1月末現在)
【所有資格】公認会計士・税理士・認定支援機関
「一人ひとりの起業家の成功を願い、日本の未来を明るくする」をモットーに、日々奔走。
目次
日本政策金融公庫で自己資金なしで融資を受けるのは、正直なところかなり難しいです。
しかし、自己資金として認められる資産や方法を理解し、それらを活用して自己資金を増やすことができれば、手元に現金が十分でない場合でも融資を受けることは可能です。自己資金が不足しているからといって諦める前に、ぜひお気軽にご相談ください。
自己資金なしでも創業融資を受けられる
結論から申し上げますと、自己資金がなくても創業融資を受けることは可能です。
ですが、自己資金が全くない場合、審査に通らない可能性が高くなります。そのため、自己資金となる資産を理解し、適切に対策を行いましょう。
自己資金は自分の手元にある資産のこと
まず自己資金について説明します。
自己資金に含まれるもの
自己資金として認められるのは、出所が明確であり、返済の義務がない、つまり「純粋な自分の財産」と言える資金です。
具体的には以下のものが含まれます。
- 預貯金
- 贈与により取得したお金
- 退職金
- 相続したお金
- 生命保険の解約返戻金
- 不動産や財産を売却して得たお金
- 創業準備のために既に使った費用(みなし自己資金)
- 第三者割当増資によって出資者から得たお金
自己資金と認められないもの
自己資金と認められないものは、現状では手元にあってもいずれ返済しなければならないお金など、第三者から借りていて返済が予定されている資産です。
具体的には以下のものが含まれます。
- 他の金融機関から借りたお金
- 親族や知人から借りたお金
自己資金を増やす方法
手元に十分な現金がない場合でも、自己資金を増やす方法はいくつか存在します。
自己資金が全くない状態でも創業融資を申し込むことは可能ですが、自己資金がある方が融資を受けやすくなります。
以下の方法で自己資金を増やすことを考えてみましょう。

不動産や財産を現物出資として申告する
不動産、有価証券(株式、投資信託など)、事業に使用する機械設備、車両など、現物資産を自己資金として申告することができます。
これを「現物出資」といいます。
自己資金として申告できる現物資産は、事業に直接関連する資産に限られます。事業と関係のない個人的な資産(例えば、居住用の家、趣味のコレクションなど)は認められない場合がありますので、注意が必要です
家族・親族から贈与を受ける
家族や親族、知人からの借入金は自己資金として認められませんが、贈与であれば自己資金に含めることができます。
力を貸してくれる家族や親族がいれば資金援助を求めることにより余剰資金として見てもらうことができます。
ただし、純粋な自己資金扱いにはならないため、融資の申し込みをする際には区別して記載しなければなりません。
注意点として、誰からいくら援助を受けたのかがわかるようにしておかなければならないため、手渡しではなく、銀行口座へ振り込んでもらいましょう。
出資者を募る
起業するビジネスに賛同してくれる投資家に出資をお願いしたりすることで、創業資金を調達する方法もあります。
もし、共同経営者がいる場合は、その方の貯蓄も自己資金となります。
ただし、資金の出所を明確にするため、共同経営者も通帳のコピーなど、資金の証明となる書類を提出する必要があります。
みなし自己資金を申告する
事業開始前に自己資金を使って費用を支払った場合、その支出は事業開始直後に自己資金で費用を支払うのと実質的に同じとみなされるため、みなし自己資金として自己資金を増やすことができます。
具体的には、下記のような費用が該当します。
- 店舗の敷金・保証金
- 事業で使用する機器・設備の購入費用
- 商品の仕入れ費用
- 広告宣伝費
- 事務所の賃料
- その他、事業に必要な準備費用
これらの費用は、事業開始後すぐに自己資金で支払うのと実質的に同じとみなされるため、融資審査などで自己資金として認められるのです。
- 事業のための支出であることを証明する必要がある
みなし自己資金として認められるためには、その支出が事業のためのものであることを証明する必要があります。
具体的には、領収書、請求書、契約書、通帳のコピーなどの書類を提出する必要があります。これらの書類は、いつ、どこで、何に、いくら使ったのかが明確にわかるものでなければなりません。 - 創業計画書との整合性
創業計画書に記載した事業計画と、みなし自己資金として申告する支出内容に矛盾がないように注意が必要です。
例えば、創業計画書で「店舗は賃貸で借りる」と記載しているのに、みなし自己資金として「店舗を購入した」という支出を申告すると、整合性が取れなくなってしまいます。 - 税務署への申告とは異なる
みなし自己資金は、あくまで融資審査などで自己資金としてみなされるものであり、税務署への申告とは異なります。税務申告では、実際に支出した時期に基づいて費用が計上されます。
クラウドファンディング
クラウドファンディングは、インターネットを通じて多数の人々から資金を集める方法です。
成功すれば、資金調達だけでなく、ブランドの認知度向上や市場の反応を得ることができるというメリットがあります。
ビジネスコンテスト
独自のビジネスプランを発表し、審査員や企業から資金や支援を受ける方法です。
ただし、ビジネスコンテストに参加しても、必ずしも賞金を受け取れるわけではないため、その点に注意が必要です。
保険を解約する
保険を解約して得た資金を、ビジネスに投資することも一つの方法です。
ただし、解約時には手数料や解約返戻金が発生する可能性があるため、その点も考慮して判断する必要があります。
流動資産担保融資保証制度
この流動資産担保融資保証制度は、売掛債権や在庫を担保とした融資に信用保証協会が保証を行うことにより、個人保証や不動産担保に過度に依存しないで融資を受けることができる制度です。
一部の業種(農業、林業、漁業、金融・保険業等)を除き、中小企業者はほとんどの業種が対象となります。
国や地方自治体の助成金・補助金
創業支援や事業拡大のために、国や地方自治体が提供する助成金や補助金があります。
これらは返済の必要がないため、負担を軽減することができます。
創業時に活用できる代表的な制度として、以下のようなものがあります。
自己資金なしでも融資が受けやすくなる方法
自己資金がない状態で審査を受けると、審査通過のハードルが高くなることは避けられませんが、融資の可能性を高める方法は存在します。
ここでは、自己資金がない状況で融資を受けやすくするための具体的な方法を詳しく解説します。

既に決まっている契約をアピールする
既に決まっている契約や顧客との正式な取引契約を示すことで、事業の収益基盤がしっかりしていることを示すことができ、支払い能力があると判断され、融資を受ける可能性が高くなります。
精密な事業計画書を作成する
自己資金がなくても融資を受けるためには、精密な事業計画書を作成することが重要です。
詳細な計画書を提出することで、事業の安定性や成長性を明確に示すことができ、融資審査を通過しやすくなります。
事業計画書の書き方についてはこちらの記事で詳しく紹介していますので、合わせてご確認ください。

専門家に相談する
専門家のアドバイスを受けることで、融資審査に有利な準備ができます。
認定支援機関を通して公庫の融資を受ける場合の具体的なメリットの例をいくつかご紹介します。
- 創業計画書等の書類の作成をサポートしてもらえる
- 融資を受ける為に費やす時間が短縮され、事業の準備の為に時間を使える
- 不安点や疑問点を事前に相談できる
- 公庫の面談の対策相談ができる
- 金利優遇を受けられる可能性がある
認定支援機関を通すことにより、創業計画書の作成サポートや申請(電子申請又は資料送付)の代行などを依頼できるため、融資を受けるための手間や時間が軽減されることが最大のメリットです。
また、公庫への融資申請は基本的に「一発勝負」です。
一度申し込んで審査で落ちてしまいますと、その後6か月の間は再度申し込みができません。加えて、公庫や金融機関のシステム上も「前回審査で落ちている」という記録も残ってしまいますので、再チャレンジの際のハードルも上がります。
そのため、百戦錬磨のプロである認定支援機関の力を借りてでも、融資の通る確率を上げていく判断は合理的ともいえます。
さらに、不安点や疑問点も事前に相談でき、安心して申込みに踏み切れるでしょう。
日本政策金融公庫の面談の対策をしてもらえることもあり、審査の通過率が高まる可能性も考えられます。
そして、認定支援機関のサポートを受けることにより、金利が優遇される制度を利用出来る可能性がある場合にはそのようなアドバイスも受けることが出来るかもしれません。
自己資金なしで創業融資を受ける方法
自己資金がない、または少ない場合は、民間の金融機関から融資を受けるのは難しいことが多いため、公的な創業融資制度の活用を検討することをお勧めします。
利用できる公的な創業融資制度は下記のとおりです。

日本政策金融公庫の新規開業資金
日本政策金融公庫の新規開業資金は、創業を支援するための融資制度です。
- 対象者
起業・開業後概ね7年以内の方 - 限度額
7,200万円(うち運転資金4,800万円) - 融資期間
設備資金は最長20年、運転資金は最長10年 - 担保・保証人
不要 - 必要書類
①履歴事項全部証明書
②源泉徴収票もしくは確定申告書(過去2年分)
③店舗・自宅の賃貸借契約書
④運転免許証の写し
⑤通帳の写し(過去6ヶ月分)
⑥実印
⑦印鑑証明書
⑧水道光熱費の支払履歴が判明する資料(過去3ヶ月分)
※申込者の状況により必要な書類は変わるため、日本政策金融公庫の担当者に詳しく確認するようにしてください。
- 申込方法と流れ

新創業融資制度について
2024年3月に、公庫の「新創業融資制度」が廃止となり、それにともない、4月より「新規開業資金」が「新創業融資制度」の要素を引継ぐ形で一部拡充されました。
新創業融資制度と拡充された新規開業資金の比較を、こちらの記事で紹介していますのでぜひご確認ください。

日本政策金融公庫の中小企業経営力強化資金
中小企業経営力強化資金は、中小企業が経営力の向上を目指すための融資制度で、企業が新たな事業展開や経営の改善を行う際に必要な資金を提供することを目的としています。
- 対象者
利用のためには要件があります。
例えば、経営革新や異分野の中小企業と連携した新事業分野の開拓を行い、市場の創出・開拓(新規開業を含む)を目指す方が対象で、事業計画書を策定し、中小企業等経営強化法に定める認定経営革新等支援機関から指導および助言を受けている。
または、「中小企業の会計に関する基本要領」または「中小企業の会計に関する指針」を完全に適用している、または適用予定である方も対象で、事業計画書を策定していること、独立行政法人中小企業基盤整備機構によるハンズオン支援を受けていること、取引金融機関の支援を受けて経営者保証免除計画を策定し、経営改革に取り組んでいる。
- 限度額
7億2,000万円 - 融資期間
設備資金の場合は最長20年、運転資金の場合は最長7年 - 担保・保証人
担保設定の有無、担保の種類などについては、相談の上で決定。
直接貸付において、一定の要件に該当する場合は、経営責任者の個人保証が必要 - 資金の使い道
要件に応じて、事業計画の実施のために必要とする設備資金
および長期運転資金などに限られています。
日本政策金融公庫の挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)
日本政策金融公庫の挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)は、スタートアップや新事業展開・海外展開・事業再生等に取り組む方の財務体質強化や、ベンチャーキャピタル・民間金融機関などからの資金調達の円滑化を支援するための融資です。
- 対象者
利用のためにはいくつかの要件があります。
例えば、小規模事業者や個人事業主の場合、新規開業資金や新事業活動促進資金といった融資制度の対象となります。
ただし、地域経済活性化に関する事業を行っていることや、税務申告を1期以上行っていること、さらに所得税を完納していることなど、一定の要件を満たす必要があります。
- 限度額
小規模事業者・個人事業主は7,200万円
中小企業は1社あたり10億円 - 融資期間
5年1ヵ月または6年から20年 - 担保・保証人
不要
制度融資(信用保証協会制度融資)
制度融資は、自治体、金融機関、信用保証協会が連携して提供する融資制度です。
要件は自治体ごとに異なりますが、自己資金が不要な制度もあり、自己資金がなくても申し込むことができる場合があります。
制度融資については、こちらの記事で詳しく紹介していますのでぜひご確認ください。

自己資金なしで創業融資を受ける場合の注意点
自己資金がない状態で創業融資を受ける場合、自己資金がある場合に比べて審査が厳しくなる傾向があるため、注意点をしっかりと把握し、対策することが重要です。
ここでは、自己資金なしで創業融資を受ける際に特に注意すべき点を紹介します。
審査に通りにくくなる
自己資金がないと、金融機関からの信用を得にくくなり、審査に通るハードルが高くなります。
事業計画の説得力や収益見込みをしっかりと示すことが求められます。
金利が高くなる
金利が高くなる可能性もあります。
金融機関はリスクを考慮し、金利を高めに設定することがあります。
そのため、返済計画をしっかり立て、総返済額や資金繰りへの影響を十分に考慮することが重要です。
一時的な「見せ金」は違法になる可能性がある
見せ金とは、融資を受けるために一時的に資金を用意し、申請後にその金額を戻す行為のことです。
このような行為は、虚偽の申告や不正行為として扱われることがありますので、絶対にやめましょう。
融資代行サポートを活用した企業や個人の成功事例
融資代行サポートを活用した企業や個人の成功事例を紹介します。
ある飲食店経営を目指すAさんは、創業融資を希望していましたが、自己資金が不足しており、通常の審査では融資を受けるのが難しい状況でした。
そこで、融資代行サポートを活用し、専門家のアドバイスを受けながら準備を進めました。
具体的には、事業計画書の収支計画や市場分析を詳しく整理し、金融機関に納得してもらえる内容に仕上げました。
また、自己資金として認められる範囲についても指導を受け、家族からの支援を受け、自己資金として計上することができました。
その結果、日本政策金融公庫の担当者との面談でも計画の実現可能性をしっかり説明でき、希望していた額の創業融資を受けることに成功しました。
このように、専門家のサポートを受けることで、通常では難しい条件でも融資を受けられる可能性が広がります。
まとめ:事前の準備が肝!まずはコマサポに無料でご相談ください
今回は、自己資金なしでも創業融資を受ける方法と注意点をみてきました。
自己資金が少なくても創業融資を受けることは可能ですが、審査を通過するには工夫が必要です。自己資金として認められる資産を整理し、現物出資や贈与、出資者を募るなどの方法で資金を確保することが重要です。
また、みなし自己資金を活用したり、公的融資制度を利用したりすることで、資金調達の可能性を高めることができます。
さらに、精密な事業計画書を作成し、専門家のアドバイスを受けることで融資の成功率を上げることも可能です。融資の申請は一発勝負となるため、事前準備をしっかりと行い、最適な方法で資金調達を進めましょう。
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