世の中には様々なタイプの飲食店があります。料理が好き、人に自分の作ったものを食べてもらって喜んでほしい、料理に関するお仕事に携わっている方など、いつか飲食店を開業したいとお考えの方も多いと思います。
飲食店の開業準備には一般的に1年程度がかかります。コンセプト設計から物件探し、内装工事や必要備品の準備など、開業までにやるべきことは数多くあります。
この記事では飲食店の開業についての流れと顧客ターゲットの設定について、開業資金を調達する方法について解説していきます。飲食店の開業をご検討の方は、この記事を見て少しでも参考にしていただけますと幸いです。
弊社でも飲食店の開業サポートを行っております。まずはお気軽にお問い合わせください。
目次
飲食店 開業のフローチャート

1.飲食店開業のコンセプト設計
お店のコンセプト作りは、飲食店の方向性を決める最も重要な行程です。
ここで基礎となるコンセプトを具体的に設計します。
コンセプト設計の6原則を紹介します。
①飲食店のターゲット顧客の明確化
飲食店を訪れるお客様のターゲットを明確にすることが大切です。ファミリー向け、ビジネスマン向け、カップルや10代20代の若者向けなど、具体的な顧客像を描くことが重要です。
※こちらについては「顧客ターゲットの設定について」で後述しています。
②飲食店の独自性と差別化
他とは異なる独自のメニューなどを提供することで、競合店と差別化され、選ばれやすくなります。「この店舗でしか味わえない特別なメニュー」「特別な食材を使った料理」「このお店でしか体験できない特別なサービス」などがあれば、来店客に対して独自の価値を提供できるでしょう。
③テーマと雰囲気の統一
店舗のテーマ・コンセプトと雰囲気を一貫させることが大切です。リラックスしたカフェ風、エレガントなダイニング、カジュアルなバーなどの明確なテーマを決め、それとインテリアデザイン、音楽、照明、スタッフの服装などを合致させると良いでしょう。
また、料理の種類(イタリアン、フレンチ、スペインバル、和食、アジアン、焼肉店等)によってもお店の雰囲気は大きく異なります。統一感のある雰囲気・内装がポイントとなります。
④地域性と季節感の考慮
飲食店のある地域の特性や季節感を取り入れることで、地域密着型の魅力を高めましょう。地元産の食材や地域の文化、季節ごとのイベントなどを反映させると、宣伝もしやすく新たな顧客獲得につながったり、リピーターの増加につながります。
⑤品質と価格のバランス
提供する料理の品質と価格のバランスを考慮しましょう。来店客にとって納得のいく価値を提供することが重要です。近隣の競合店のメニューや価格も事前に分析しておきましょう。
2.事業計画の策定
お店のコンセプトを決めたら、事業計画書を作成します。
事業計画書に記載すべき最低限の項目は、下記の7点です。
◦飲食店開業の動機
◦経営者の略歴
◦飲食店のコンセプト(創作イタリアン、和風居酒屋、カジュアルフレンチ、焼肉店等)
◦店舗情報(立地と競合状況・営業時間・取引先など)
◦雇用計画(雇用予定の従業員数・人件費)
◦資金計画(資金調達方法・返済計画など)
◦損益計画(売上や経費の見込み)
金融機関で創業融資を受ける際や法人口座を開設する際に提出を求められることもある重要な書類のため、必ず作成しましょう。
日本政策金融公庫の創業計画書の項目については、こちらの記事で詳しく紹介していますのでぜひご確認ください。

3.物件探し
飲食店を開業するためには、適切な物件の選定が極めて重要です。コンセプト設計や事業計画書の策定が終わった段階で早めに着手し、6ヶ月前には物件を決めましょう。
エリアや物件の種類などターゲットや予算に合わせて選ぶことが重要です。
エリアの種類
◦オフィス立地
◦商業立地
◦住居立地
物件の種類
◦路面店舗:通りに面しており、通りから入れる店舗
◦地下店舗:地下にある店舗
◦空中店舗:ビルの2階以上にある店舗
こちらの記事では、飲食店の立地選びのポイントについて詳しく解説しています。ぜひご参照ください。

また、飲食店の開業において、「居抜き店舗」なのか「スケルトン引渡し」なのかによっても、開業費用が大きく変わってきます。「居抜き店舗」であれば開業資金として600万円程、「スケルトン(物件)引渡し」であれば開業資金として1,200万円を少なくても見積もっておいた方が良いでしょう。
(参考)居抜き物件とスケルトン物件について
飲食店の開業において、良い「居抜きテナント」に巡り合うことができれば、開業・創業時の設備投資額を大きく抑えることができます。
ただし、少し立ち止まって考えていただきたいのは、「居抜き」ということは、その前に同じ場所で飲食店を経営していたオーナーがいて、様々な理由でうまくいかずに閉店に至ったという可能性があります。
オーナーに飲食店経営のセンスがなかった・・・という理由でしたらまだ良い(というよりは挽回の余地がある)のですが、立地面で思ったよりも地域での認知度が高まらず、新規のお客様の獲得が難しかった・・・という理由による撤退の可能性もあります。
その見極めを外部から行うことは難しいのですが、弊社にご相談いただければ、テナントの選定段階から立地のアドバイス等も含めて行わせていただいております。お気軽にご相談ください。
なお、スケルトン物件とは、内装は一切施されておらず、コンクリートはそのままで配管や配線もむき出しになっているテナントです。オーナーが一から自由に内装設計やデザインを行える長所・メリットがありますが、デメリットとして内装費用が多額になります。そのため、一般的にスケルトン物件は十分な自己資金も必要となってくるでしょう。
4.店舗内外装施工・メニュー開発
コンセプトをもとに、店舗の内装外観の設計やメニュー作りを行います。
店舗内外装施工
内装外装は施工会社に依頼することが多いですが、コンセプトをきちんと伝え、イメージに近いほかの店舗の写真などを用意して説明するとスムーズです。
メニュー開発
メニューによって必要な設備や備品、食材や酒類の仕入れ先が変わるため、メニュー作りは比較的早い時期から取り組みましょう。
コンセプトに沿っているメニューを考案することはもちろん価格設定も大切です。また近年はSNSでシェアされることで人気になるお店も少なくなく、ビジュアルや盛り付けにも工夫が必要です。
価格設定は一般的に原価率30%が目安と言われています。
5.厨房設備・什器・備品購入
厨房は調理器具、伝票やレジなど店側が使うものの両方が必要です。
客席の備品はコンセプトに基づき、統一感を意識して用意しましょう。
6.飲食店の開業に必要な手続き
飲食店の開業に関して、それぞれに下記の書類を届け出る必要があります。
- 営業許可申請:全ての飲食店が対象
- 防火対象物使用開始届:全ての飲食店が対象
- 深夜酒類提供飲食店営業届:深夜0時以降に酒類を提供する飲食店が対象
- 個人事業の開業届出書:個人事業主として開業する場合が対象
そのほか、業種や業態によって必要な届出が異なるため、忘れずに届出を行いましょう。
また飲食店営業許可のために食品衛生責任者の資格が必要です。
食品衛生責任者の資格費用は大体1万円~2万円程度で、食品衛生協会が各地で開催する6時間ほどの講習を受講すると、資格を取ることができます。
調理師免許の取得は不要ですが、持っていることで顧客から信用を得られるなどのメリットが期待できます。
7.飲食店の開業準備
飲食店開業の2週間前には、必要な設備や備品の準備とスタッフの採用が完了していることが望ましいです。オープンに向けて最終準備を整えましょう。
顧客ターゲットの設定について
こちらでは、集客のために重要な、顧客ターゲットの設定について説明します。
「ターゲット設定」とは、もともとマーケティング領域から出てきた考え方です。集客する顧客(ターゲット)を設定することを指します。集客を狙う客層を絞ることで、顧客の減少を心配する声もあるかもしれません。しかし、現代では消費者のニーズが多様化しており、あえて特定のターゲット層にアプローチをすることも戦略のひとつです。ターゲット設定は集客力を上げる重要な方法です。
性別
まず、基本的に男女どちらをメインターゲットにしていくのか考えていきましょう。
男性に好かれやすい商品、女性に好かれやすいデザインなど、男女どちらをメインターゲットにしていくかによってメニュー商品開発、広告で使う写真や文言、デザインは変わってきます。
一般的に男性は機能性、女性は感覚的な魅力を重視する傾向にありますし、デザイン面では黒や青は男性向けサービス、カラフルな配色は女性向けサービスに引きがあるとされています。
年齢層
どの年齢層をターゲットにするかも重要な要素となります。年代によって収入やライフスタイルがことなるため、購入するものに対しての考え方に変化が現れます。そのため、魅力的に映るデザインや機能性も異なれば、SNS広告やPCサイトの広告など目にする頻度の高い広告媒体も異なります。
以下の表は一例です。
年代 | 特徴 |
10代 | 流行に敏感、自由に使えるお金は極めて少ないが自分のために使う、友人と過ごすことが多い |
20代前半 | 10代に比べ購入に積極的、自分のために使うが高級品は少ない |
20代後半~30代 | 20代前半に比べ良いものへの投資、自分の時間を大切にする |
30代後半~40代 | 家族を持つ人も多くなり、家族にお金を使うシーンも増え、自分のためのお金は少ない |
50代 | 収入が多くなる |
60代 | 自分のために使うお金が多くなる |
属性
性別と年代が定まってきたら、おおよその属性についても考えましょう。
- 高校生
- 大学生
- サラリーマン(入社数年)
- サラリーマン(管理職)
- 主婦
- 経営者
その人の属性によって、収入やライフスタイルは大きく変わります。それに合わせたPRや商品やサービスの開発をすることが重要です。
入社数年のサラリーマンであれば、収入はそんなに高くないので、比較的に気軽にいくことのできるお店や記念日の際も1万円前後を目安に考えるのが一般的でしょう。また、通勤時間、ランチタイム、帰宅時間がスマホを見る時間帯になるので、その時間帯やルートに広告を設置していく必要があります。
逆に、比較的収入の高い客層であれば、数万円のお店を高い頻度で利用することがありますが、その価値のある相応のサービスや商品、空間を求められます。また、人脈や横のつながりも強い傾向にあるので紹介したくなるようなお店の設計やあえてSNSで発信し過ぎず隠れ家感の演出をすることも大切ですね。
主婦の場合であれば、サラリーマンとは休むことのできる時間帯が大きく異なりますので、利用される時間はもちろん、SNS広告やSNSの配信についても時間帯を工夫していく必要があります。子供を幼稚園などに送っていったあとの時間や家事がひと段落した時間帯がそれらにあたります。また小さな子供がいることや美容に対しての意識も高いので、ナチュラル志向のメニューが好かれる傾向にもあります。
場面
飲食店の利用場面といっても様々ですので、どのシーンをお店のメイン集客シーンにしていくのかを決めていきましょう。どのような場面で利用するかは以下のような例があります。
- 一人飲み
- 宴会(仕事帰りにふらっと3~4人で、部署単位の大人数)
- デート
- 女子会(ランチ、ディナー)
- 友人と二人で
- 夫婦やカップルで記念日
- 家族で休日に
シーンが決まってくると、おおよそ何人グループが多いお店なのかが決まってきますので、料理のポーションやメニューのラインナップをどのようにすれば喜ばれるのか、イメージがつきやすくなりますよね。
一人飲みに使いやすいお店は1人前の量が多すぎないお店。宴会に使いやすいのは、複数名でシェアしやすいお店。
このようにターゲットを設定することで、ターゲットに合わせたサービスを考え、集客につなげることが可能となります。
飲食店開業のための資金調達方法について
ここからは、資金調達について説明します。
一般的に飲食店の開業に必要な資金は物件取得費・内外装工事費・調理に関する器具や機械などの設備費用に加え、家賃・人件費・光熱費などの運転資金を考えると、居抜き物件で600万円~、スケルトンで1,200万円~になる場合が多いです。
一般的に必要資金のすべてを自己資金でまかなうことは難しい場合が多いです。また、開業後には予想外の支出が出てくることも念頭に置いておきましょう。
飲食店に限った話ではないのですが、飲食店の開業資金のための資金調達の方法には、以下のような方法があります。

金調達の方法には、以下のような方法があります。
- 自己資金
自身が所有する資産を利用する資金調達方法です。自己資金が多いと多くの融資を受けやすくなるというメリットもあります。 - 親・親戚・友人に貸してもらう。
公式な手続きや審査が不要なため、迅速に資金を調達できるほか、低金利または無利息で借りられることが多く、返済期間についても柔軟に設定できる場合が多いです。 - 日本政策金融公庫等の金融機関から創業融資を受ける。

- ベンチャーキャピタル
将来成長が見込めるベンチャー企業やスタートアップ企業の将来の成長を見込んで投資する組織のことです。資金を返済する必要はありませんが、企業が成長や上場したときに株式を売却することで資金を回収します。 - エンジェル投資家
将来成長が見込めるベンチャー企業やスタートアップ企業に出資する個人投資家のことです。投資したお金を企業から直接回収することはせず、将来そのベンチャー企業が株式上場した際の出資金のキャピタルゲインを得ることを目的としている場合が多いです。
このうち、自己資金で開業できればベストなのですが、必要となる資金を全額自己資金で用意できる方は少数だと思います。
また、人脈や家族の力を利用し、「他人からの出資」によって開業資金を賄える方もかなりの少数だと思います。
現実的には、日本政策金融公庫などの金融機関や信用金庫からの創業融資を検討することが多くなると思います。
それでは、具体的に融資を受ける方法について見ていきましょう。
飲食店の開業に利用できる融資先の例
下記は、飲食店の創業や開業時に利用可能な融資先の例です。
【日本政策金融公庫】
創業・継承、設備投資、研究開発、海外展開など、様々な事業目的に合わせた融資制度がある機関です。詳しくは、こちらをご覧ください。
【保証協会付き融資】
信用保証協会(東京都の場合)が保証人となって金融機関から融資を受ける制度です。
詳しくは、こちらをご覧ください。
まとめ
今回は、飲食店の開業について、スポットをあててご説明してきました。
「コマサポの創業サポートナビ」を運営する駒田会計事務所は、これから創業される方・創業5年以内の皆様に対して、創業時における資金調達のサポートを行っております。日本政策金融公庫の創業融資の支援を始め、多くの創業融資のサポート実績があります。
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駒田会計事務所 【コマサポ】 代表
公認会計士・税理士 認定支援機関
駒田 裕次郎