日本政策金融公庫の創業融資では、自己資金や事業計画書の内容だけでなく、創業者本人の「業務経験」も重視されます。
特に創業融資は、まだ実績がない段階で申し込む融資です。そのため、公庫の担当者は、創業者の過去の経験や準備状況から、事業の成功可能性を判断します。
この記事では、日本政策金融公庫の創業融資において業務経験が重要視される理由や、未経験の場合どのようにアピールすべきかについて解説します。
日本政策金融公庫の創業融資で「業務経験」が重視される理由
業務経験を創業計画書や面談で効果的にアピールする方法
業務経験がない場合に、経験不足を補うための具体的な対策
目次
日本政策金融公庫の創業融資では「業務経験」が重視される
日本政策金融公庫の創業融資では、創業者の業務経験が重要な審査ポイントのひとつになります。

なぜなら、創業直後の事業には売上実績や決算書がないため、金融機関は「これまでの経験」や「開業前の準備状況」をもとに、事業を継続できるかどうかを判断するからです。
一方で、まったく経験のない業種で開業する場合は、事業計画の実現性について慎重に見られる可能性があります。
もちろん、業務経験がないからといって必ず融資が受けられないわけではありません。しかし、経験がある人と比べると、事業を成功させるための根拠をより丁寧に説明する必要があります。
なぜ業務経験が重要なのか
創業融資で業務経験が重視される理由は、主に以下の3つです。
事業の成功可能性を判断する材料になる
創業融資では、これから始める事業が本当に軌道に乗るのかを見られます。
その際に重要になるのが、創業者がその業界や業務についてどれだけ理解しているかです。
業務経験がある人は、業界特有の流れ、顧客対応、売上の作り方、仕入れや人件費の管理、繁忙期・閑散期の動きなどを実体験として把握している可能性が高いです。
そのため、公庫の担当者から見ても「開業後の運営イメージができている」と判断されやすくなります。
創業計画書の説得力が高まる
創業計画書には、創業の動機や売上計画、取引先、強みなどを記載します。
しかし、業務経験がない場合、計画の数字や内容に対して「本当に実現できるのか」と疑問を持たれることがあります。
反対に、経験に基づいた計画であれば、売上予測や集客方法にも説得力が出ます。
たとえば、
「前職で月〇件の顧客対応をしていた」
「勤務先で売上管理を担当していた」
「同業種で〇年間勤務し、仕入れや原価管理も経験している」
こういった実績があると、創業計画書の内容と結びつけて説明しやすくなります。
融資後に返済できるかを判断される
日本政策金融公庫が重視しているのは、単に「事業を始められるか」ではなく、「融資したお金をきちんと返済できるか」です。
そのため、創業者が事業を継続し、利益を出し、返済を続けられる人物かどうかが見られます。
経験があることで、事業運営に必要な知識やスキルがあると伝わりやすくなり、融資担当者に安心感を与えることができます。
創業計画書では業務経験を具体的に書く
業務経験をアピールする際は、単に「経験があります」と書くだけでは不十分です。
創業計画書では、どのような業務を、どのくらいの期間、どのような立場で行ってきたのかを具体的に記載しましょう。
たとえば、以下のような内容です。
・同業種での勤務年数
・担当していた業務内容
・売上管理や仕入れ管理の経験
・接客、営業、顧客対応の経験
・店舗運営やマネジメント経験
・資格や研修の受講歴
・独立に向けて準備してきた内容
重要なのは、これまでの経験が、これから始める事業にどう活かせるのかを説明することです。
履歴書のように職歴を並べるだけではなく、「この経験があるから、この事業を運営できる」と伝わるように書くことが大切です。
創業の動機と業務経験を結びつける
創業計画書では、「創業の動機」も重要な項目です。
ここでは、単に「昔から独立したかった」「地域に貢献したい」といった思いだけを書くのではなく、これまでの業務経験と結びつけて記載することがポイントです。
たとえば、以下のような流れです。
「前職で〇〇の業務に携わる中で、顧客から□□というニーズを感じていた」
「その経験から、より専門的に〇〇を提供する事業を立ち上げたいと考えた」
「これまでの経験を活かし、△△を強みとしたサービスを展開する」
このように書くことで、創業の動機に説得力が出ます。
融資審査の担当者が知りたいのは、単なる熱意だけではありません。
「なぜこの事業を始めるのか」
「なぜこの人なら成功できるのか」
「これまでの経験がどう活かされるのか」
この3点が伝わるように整理しましょう。
業務経験がある場合のアピール方法
業務経験がある場合は、できるだけ具体的な実績を示しましょう。
たとえば、以下のように業種ごとにアピールポイントを整理すると伝わりやすくなります。
| 業種例 | アピールできる経験・実績例 |
|---|---|
| 飲食店 | 調理経験、接客、仕入れ、原価管理、アルバイト教育、売上管理 |
| 美容業 | 施術件数、リピート率、指名客の有無、資格、勤務年数 |
| 営業職 | 担当顧客数、販売実績、契約件数、提案内容 |
業務経験をアピールする際は、以下のように整理すると伝わりやすくなります。
・何年経験しているか
・どのような業務を担当していたか
・どのような実績があるか
・開業後にどの経験を活かせるか
・すでに見込み客や取引先があるか
数字で示せる実績がある場合は、できるだけ記載しましょう。

「〇年間勤務」
「月〇件対応」
「年間〇万円の売上に関与」
「リピート率〇%」
など、具体的な数字があると説得力が高まります。
業務経験がない場合はどうすればよいか
業務経験がない場合でも、必ず融資が受けられないわけではありません。
ただし、経験がある人と比べると、審査では慎重に見られやすくなります。
そのため、業務経験が不足している場合は、経験の不足を補うための対策を事前に行うことが大切です。
関連する実務経験を整理する
まずは、直接同じ業種での経験がなくても、関連する経験がないかを整理しましょう。
| 開業予定の業種 | 活かせる関連経験の例 |
|---|---|
| 飲食店 | 接客業、販売業、営業職、マネジメント経験など |
| 美容サロン | 施術経験、接客、予約管理、SNS運用、顧客対応など |
完全に未経験だと思っていても、これまでの職歴の中に活かせる経験があることは少なくありません。
資格取得や研修受講で知識を補う
業務経験が不足している場合は、資格取得や研修の受講も有効です。
資格や研修は、実務経験そのものの代わりにはなりませんが、開業に向けて知識を身につけていることや、準備を進めていることを示す材料になります。
経験者を協力者にする
自分自身に業務経験がない場合は、経験者の協力を得ることも対策のひとつです。

・同業種での経験がある従業員
・外部アドバイザー
・業務委託先
・仕入先
・フランチャイズ本部などの協力体制
たとえば、上記のような協力体制がある場合は、事業運営の不安を補う材料になります。
もし、開業後に実務を担当する人が経験者である場合や、継続的に相談できる専門家がいる場合は、創業計画書に記載しておくとよいでしょう。
フランチャイズや支援制度を活用する
未経験での開業では、フランチャイズへの加盟や、商工会議所・認定支援機関などの支援を活用する方法もあります。
フランチャイズの場合、商品・サービスの提供方法、研修制度、マニュアル、仕入れルート、集客支援などが用意されているケースがあります。
これにより、未経験者でも一定の運営体制を整えやすくなります。
ただし、フランチャイズに加盟すれば必ず融資が通るわけではありません。加盟金やロイヤリティ、収支計画の妥当性、本部の支援内容なども確認されます。
支援制度を利用する場合も、「専門家に相談している」「計画を客観的に確認してもらっている」という点は、準備状況を示す材料になります。
小さく始めて実績を作る
業務経験がない場合は、いきなり大きな投資をするのではなく、小さく始めて実績を作る方法もあります。
たとえば、以下のような方法があります。
・店舗を借りる前にイベント出店をする
・ネット販売から始める
・副業として顧客を獲得する
・週末のみ起業する
・業務委託で実務経験を積む など
すでに売上実績や見込み客がある場合は、未経験であっても事業の実現可能性を説明しやすくなります。
担当者にとっても、「すでに需要がある」「顧客を獲得できる可能性がある」と判断しやすくなります。
業務経験がない場合に避けたい説明
業務経験がない場合、面談や創業計画書での説明には注意が必要です。
たとえば、以下のような説明だけでは、説得力が弱くなってしまいます。

・昔からやってみたかった
・流行っているので始めたい
・知人に勧められた
・なんとなく需要がありそう
・資格を取ったので開業したい
開業への思いや熱意は大切ですが、創業融資では熱意だけでなく、事業として継続できる根拠が求められます。
経験が不足している場合は、なおさら「どのように学んだのか」「誰に協力してもらうのか」「どのように売上を作るのか」「なぜ返済できるのか」を具体的に説明する必要があります。
自己資金の準備も重要な判断材料になる
業務経験とあわせて、自己資金の準備状況も重要です。
自己資金は、どのように貯めてきたのか、創業に向けて計画的に準備してきたのかが見られます。
特に業務経験が少ない場合は、自己資金の準備によって「本気で創業に向けて準備してきたこと」を示すことができます。
毎月の給与からコツコツ貯めてきた資金、退職金、過去の事業収入など、資金の出どころや蓄積の経緯を説明できるようにしておきましょう。
自己資金についても、創業計画書や面談でしっかり説明できるように準備しておくことが大切です。
面談では「経験」と「準備状況」を具体的に伝える
日本政策金融公庫の創業融資では、面談も重要です。
面談では、創業計画書の内容をもとに、事業内容、売上見込み、資金使途、自己資金、経験、準備状況などについて質問されます。
業務経験がある場合・・・これまでの経験をどのように事業に活かすのかを説明しましょう。
業務経験がない場合・・・経験不足をどのように補うのかを具体的に伝える必要があります。
たとえば、以下のような内容を整理しておくとよいでしょう。
・なぜこの事業を始めるのか
・これまでの経験のうち、事業に活かせるものは何か
・不足している経験や知識をどう補うのか
・開業前にどのような準備をしてきたのか
・見込み客や取引先はあるのか
・売上計画の根拠は何か
・返済原資をどのように確保するのか
面談は、担当者に対して「この人なら事業を継続できそうだ」「融資しても返済してくれそうだ」と感じてもらうための場です。そのためには、経験や準備状況を具体的に、わかりやすく伝えることが大切です。
まとめ
日本政策金融公庫の創業融資では、創業者の業務経験が重要な審査ポイントになります。
創業直後は事業実績がないため、日本政策金融公庫の担当者は、
- 創業者の経験
- 知識
- 準備状況
- 自己資金の形成過程
などをもとに、事業の成功可能性や返済可能性を判断します。
業務経験がある場合は、勤務年数や担当業務、実績を具体的に整理し、創業計画書や面談でしっかりアピールしましょう。
一方で、業務経験がない場合には、
- 関連する経験を整理する
- 資格や研修で知識を補う
- 経験者の協力を得る
- 小さく始めて実績を作る
など、経験不足を補うための対策を行うことが大切です。
創業融資では、「やりたい」という気持ちだけでなく、「なぜ自分がこの事業を成功させられるのか」を具体的に伝える必要があります。
業務経験や準備状況に不安がある方は、創業計画書を作成する前に、専門家に相談しながら整理しておくことをおすすめします。コマサポでも資金調達のご相談を承っています。
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駒田会計事務所【コマサポ】
代表 駒田 裕次郎
(税理士・公認会計士・認定支援機関)

| 監修: 駒田 裕次郎 駒田会計事務所【コマサポ】代表 | ||
| 【来歴】大手監査法人の経験を活かし、創業支援・補助金サポートを中心とする「駒田会計事務所」を東京・渋谷に設立。資金調達や事業計画の作成、税務や経営相談まで顧客に寄り添うきめ細やかなサポートを提供。 【実績】創業融資・補助金の支援実績は、累計3,000件以上(2026年4月末現在) 【所有資格】 ・日本公認会計士協会 東京会所属(第26214号) ・東京税理士会所属(第118805号) ・経営革新等支援機関(認定支援機関) | ![]() | |
| 「一人ひとりの起業家の成功を願い、日本の未来を明るくする」をモットーに、日々奔走。 | ||

駒田裕次郎


























