創業融資

【税理士/公認会計士が解説】起業で必要な自己資金の目安はいくら?開業資金の平均値も解説

 

この記事でわかること
  • 起業時の自己資金の目安は開業費用の最低10%、できれば30%は準備しておこう。
  • 自己資金として認められるものは、自分や家族の預貯金、贈与されたお金、退職金、解約返戻金のある保険、売却資産など。
  • みなし自己資金は、認定されれば自己資金となる。
  • 流れや出所が不明なお金は、自己資金にはできない。
  • 自己資金をしっかり準備することで、融資担当者へやる気を表すことができる。
  • 自己資金と併せた資金調達には、日本政策金融公庫がおすすめ。

自己資金ゼロ円で起業ができれば、グッと起業のハードルは下がりますよね。実際に、創業融資の観点ではどうなのでしょうか。
やはり、融資を受ける際には自己資金を多く用意しておくことで、融資額や審査の通りやすさについて有利になることは間違いないでしょう。この記事では自己資金についての目安額、自己資金と併せて利用したい融資制度などをご紹介します。

監修:駒田 裕次郎
駒田会計事務所【コマサポ】代表

【来歴】大手監査法人の経験を活かし、創業支援・補助金サポートを中心とする「駒田会計事務所」を東京・渋谷に設立。資金調達や事業計画の作成、税務や経営相談まで顧客に寄り添うきめ細やかなサポートを提供。
【実績】創業融資・補助金の支援実績は、累計3,000件以上(2025年1月末現在)
【所有資格】公認会計士・税理士・認定支援機関
「一人ひとりの起業家の成功を願い、日本の未来を明るくする」をモットーに、日々奔走。

目次

自己資金がなくても融資を受けることは不可能ではありません。ご自身の状況に合った融資を理解し、選択することが起業成功へのステップとなります。
創業融資は、もし通過しなかった場合は最低でも半年間は再申請ができません。安心して申請いただくためにも、お悩みの際はぜひ一度ご相談ください。

融資を受ける際に用意するべき自己資金の目安

開業資金の最低10%、できれば30%

業種によっても異なりますが、一般的には開業総費用の10~30%は必要といえます。

かつては日本政策金融公庫の融資制度に10%の自己資金要件がありました。現在は日本政策金融公庫の制度拡充により、10%の自己資金要件は廃止されています。

ですが、弊社コマサポでは現在も可能であれば30%の自己資金を用意することを推奨しています。実際に融資申請を行う際に、自己資金が用意できていない人は融資を獲得しにくいという現状があるためです。

最低でも10%の自己資金は準備しておきたいところです。

開業資金の平均値から算出した自己資金は・・・

2024年日本政策金融公庫の調査によると、個人事業主の開業資金の平均値は985万円中央値は580万円です。

業種にもよりますが、そこから10%~30%を自己資金として準備すると、みなさん以下の金額を自己資金として準備していることがわかります。

2024年に開業した人が準備した自己資金

平均値 約100万~300万円

中央値 58万~174万円

自己資金の貯め方

もし自己資金のない方は、まずは、必要な開業資金の10%程度の自己資金を貯めることをおすすめします。自己資金の貯め方について、詳しくはこちらの記事でもご紹介していますのでご参考ください。

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そもそも自己資金とは

自己資金といっても実は様々です。わかりやすく言うと、「自分自身でコツコツ貯めたもの」というのが基本的な定義です。自己資金として認められるものと認められないものを細かく確認しましょう。

自己資金として認められるもの

具体的に自己資金として認められるものは以下の項目です。

個人の預貯金

当然ですが、自分名義の預貯金通帳に貯めたお金は自己資金となります。もっともお金の出所が明確で、金銭管理能力の証明になるため、金融機関から高評価を得ることができます。

家族名義の預貯金通帳に貯めたお金

家族名義(=配偶者・子供名義)の預貯金通帳に貯めたお金も自己資金となります。
ですがその場合は、自分が事業の自己資金として使用することに対する、配偶者や子供の承諾を示す書類(同意書、委任状等)を金融機関へ提出することが必要となります。

返済義務のない、贈与されたお金

知人や親せきから事業のために援助されたお金も自己資金となりえます。以下のような点には注意しましょう。

  • 金融機関により、必ず自己資金と認められるとは限らない
  • 贈与を受ける場合は贈与する人の名義で銀行振り込みなどしてもらい、記録に残す
  • 年間110万以上は贈与税の対象

自身の退職金

退職金についても自己資金として使うことができます。その場合は、退職金の支給日や金額を証明するために以下のような書類が必要となります。

  • 退職証明書、退職金支給明細書など

退職金は所得税や住民税の対象となるため、 退職金を自己資金として使う場合は、税金の計算や申告にも注意が必要です。

解約返戻金がある保険や学資保険

保険の解約返戻金を自己資金として使う際には、支払日や金額を証明するために保険証券や解約証明書などが必要となります。

自己資産を売却したお金

不動産や株式などの資産がある場合、それらを売却したお金も自己資金とすることができます。資産の価格や売却日等の証明のために売買契約書や領収書、口座明細書などの書類が必要になります。売却益や譲渡所得などの税金の影響にも注意しましょう。

第三者割り当て増資

特定の第三者に有償で新株を発行し、資金を調達する方法です。
この第三者割当増資を利用して自分以外の人や法人に株式を購入してもらうことで、自己資金として認められる場合があります。
株式の譲渡・譲受に関する契約書や株主名簿などの書類が必要になります。

みなし自己資金

みなし自己資金も認められれば自己資金となります。詳しくは次項で説明します。

みなし自己資金とは?

みなし自己資金とは、創業準備や開業後に事業のためにすでに支払ったお金を自己資金として認めてもらうことです。融資を受ける際に、自己資金として申請するのが一般的です。

みなし自己資金として認められる可能性が高いもの

  • 機械設備や工具の購入費
  • 店舗の内装費用
  • フランチャイズ加盟費用
  • 商材
  • 会社設立費用(金融機関によっては)
  • 親類や第三者から拠出してもらった資金

みなし自己資金の注意点

  • 該当基準は金融機関によって異なる
  • 正確な資料を準備する(請求書、領収書、振込明細など)
  • 創業計画書にも記載する

自己資金として認められないもの

基本的には出所が証明できない、不明なお金は自己資金として認められない可能性が高いです。お金の流れをしっかりと記帳や書類などで説明できることが重要です。

通帳に入れていないお金

預貯金通帳に入金していないお金は、お金の流れが示せない出所不明の資金となり、自己資金として認められません。

一時に大きな金額が入金されているもの

こういった一気に大金が口座に入れられているような場合、出所不明として自己資金と認められない可能性があります。融資担当者が不自然に感じ、「見せ金」とみなされてしまうことがあります。

こういったお金を自己資金として使う際は、なぜ入金されたのかを証明できる書類を準備しておきましょう。
退職金や相続金などの場合は、源泉徴収票や相続税の納税証明書などを提示することで、自己資金として認められる可能性があります。

返済義務のある、人から借りたお金

金融機関から借入れた資金など、返済義務のあるお金は自己資金として認められません。知人や親せきから資金提供を受けた場合も、返済する必要がある場合は自己資金には当たらないため注意が必要です。

自己資金はなぜ重視されるのか

融資において、とても重要視されている自己資金ですが、なぜそんなにも重視されているのでしょう。それは、以下のような理由があるためです。

事業に対する真剣さの指標となるため

自己資金をしっかり準備することで、融資担当者はその人の事業にかける真剣さを知ることができます。

コツコツと計画的にお金を貯めることができる人=「やる気」「計画性」のある人物

ということを見せることができる点が大きいです。ある程度の自己資金を準備できれば、融資を獲得しやすくなり、創業において資金不足に陥るリスクも減らすことができます。

自己資金がある場合でも融資を受けるべきか?

もしも、開業費用をまかなえるほどの自己資金があった場合、それでも創業時に融資を受けるべきなのでしょうか?

自己資金があっても融資は受けるべき

やはり、自己資金の準備が十分出来ていても、創業時には融資を受けるべきと言えます。理由について、細かくみていきましょう。

事業計画書や創業計画書をプロに評価してもらえる

創業時に自己資金があっても融資を受けるべき利点のひとつは、金融機関から事業計画について直接評価やアドバイスがもらえる点です。これにより、自分では気づきにくい強みや課題が見える化されることもあります。融資の申請は、資金調達だけでなく事業を磨くチャンスとしても活用できます。

創業計画書について、書き方など詳しく説明している記事についてもよろしければご参照ください。

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金融機関との信用を築くことができる

融資を受けることで、金融機関との取引実績ができ、信頼関係の構築につながります。毎月の返済を滞りなく続けることで、金融機関からの信用が高まり、将来の取引にも良い影響を与えるでしょう。特に重要なのは、創業融資を通じて「金融機関の審査に通った」という実績が残る点です。これは他の金融機関への信頼アピールにもなり、もし今後急な資金ニーズが生じた際にも、スムーズに相談・対応してもらえる可能性が広がります。

予想以上に費用がかさむケースが多い

起業時は計画を立てていても、想定以上にお金がかかることが多いものです。急な支出に対応できる余裕がないと、運転資金を削ることになりかねません。そんなリスクを避けるためにも、少し余裕を持った資金準備が安心です。

こちらの記事で起業にかかるお金について説明しているので、ご参照ください。

融資の疑問
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必要な時にすぐ融資を受けるのは難しい

融資は申し込んでもすぐに資金が手元に入るわけではなく、着金までに1~2ヶ月かかるのが一般的です。そのため、資金が必要になってから申請しても間に合わないことが多いのです。また、融資額は自己資金の2~3倍が目安なので、自己資金を使い切ってしまうと借入額も減り、資金繰りが厳しくなる可能性があります。

以下の記事では融資実行までのスケジュールをご紹介しています。ご参照ください。

創業融資の申し込みから融資実行までのスケジュールと流れを解説!申請前に知っておくべき必須情報日本政策金融公庫などの創業融資の利用を考えている人の中にはどのようなスケジュールで融資まで実行されるのか気になる方も少なくないですよね。...

必要な生活費は残しておこう

いくら自己資金が重要だからといっても、手持ちのお金全額を自己資金に充てるのは避けましょう。生活費は別に確保しておくことが大切です。開業初期は事業と生活の収支が混ざりやすく、生活費が足りなくなると事業資金に手をつけることにもなりかねません。食費やローンなどを含め、生活費は最低でも3ヶ月分は準備しておきましょう。

自己資金と併せて利用したい融資制度

自己資金のみで起業費用をまかなうことができる方は少数でしょう。やはり自己資金と併せて融資を受けることが一般的です。

こちらでは自己資金と併せて利用をおすすめしたい融資制度をご紹介します。実際に、都市銀行や地方銀行、信用金庫などの民間金融機関でも融資を行っていますが、審査などのハードルが高く、起業時にはあまりおすすめできません。

日本政策金融公庫

比較的低金利、要件を満たせば無担保・無保証で融資を受けられるという点で最もおすすめな資金調達方法と言えます。日本政策金融公庫は、政府が100%出資する金融機関 で、創業時の資金調達において最も利用される融資機関の一つです。特に、自己資金が少ない起業家や、信用力がまだ十分でない事業者に対しても積極的に融資を行っています。
「日本政策金融公庫が他の融資元よりおすすめな理由」について、こちらで解説しておりますので、ぜひご覧下さい。創業融資は日本政策金融公庫がおすすめ!

ただし、唯一のデメリットとも言えますが、融資を受けるには、創業計画書の提出や面接対策などの準備をしっかりとする必要があります。

弊社コマサポでも、日本政策金融公庫の創業融資代行サポートを行っています。確実に融資を獲得するためには、専門家への相談もご検討ください。専門家に相談するべきかどうか、こちらの記事でも解説しています。

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制度融資

制度融資は、地方自治体・信用保証協会・金融機関が一体となって提供する融資制度です。自治体により異なりますが、保証料の補助などもあり、比較的利用しやすい融資です。日本政策金融公庫に次いでおすすめできます。
ですが、それぞれの機関で審査が必要なため、融資までに時間がかかる点はデメリットと言えます。

「都道府県制度」や「市区町村制度」など、年間金利や融資限度額などの条件は自治体ごとに異なるため、詳細については各自治体への問い合わせが必要です。

補助金や助成金の利用

要件を満たせば有効な資金調達方法といえます。ですが、助成金や補助金は様々な申請条件があるため、すべての申請者が必ず受けられるわけではありません。審査基準や対象事業に合致するかどうか、まずは確認してみることをおすすめします。こちらの記事で詳しく説明しているので、ぜひご参照ください。

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弊社コマサポでも補助金 申請代行サポートを行っております。
お気軽にお問い合わせください。

まとめ

今回は、起業時の『自己資金』にスポットをあてて説明しました。ポイントは以下の通りです。

  • 自己資金は開業費用の最低10%、できれば30%は準備しておこう。
  • 自己資金になるもの→流れや出所がはっきりしているお金。(自分や家族の預貯金、贈与されたお金、退職金、解約返戻金のある保険、売却資産など。)
  • 自己資金にならないもの→流れや出所が不明なお金。(短期間に大金が入金されたなど)
  • コツコツ貯められた自己資金は、堅実性や計画性のアピールになる。
  • 自己資金と併せた資金調達には、日本政策金融公庫がおすすめ。

起業においての鍵となる資金調達には欠かすことのできない自己資金。計画的に準備して、融資を成功させましょう。コマサポでも資金調達サポートを行っていますのでお気軽にお問い合わせください。

「コマサポの創業サポートナビ」を運営する駒田会計事務所は、これから創業される方・創業5年以内の皆様に対して、創業時における資金調達のサポートを行っております。日本政策金融公庫の創業融資の支援を始め、多くの創業融資のサポート実績があります。

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駒田会計事務所【コマサポ】 代表 駒田裕次郎 税理士・公認会計士

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