創業融資

日本政策金融公庫の新規開業資金は自己資金なしでも利用できる?

2024年3月に、公庫の「新創業融資制度」が廃止となり、それにともない、4月より「新規開業資金」「新創業融資制度」の要素を引継ぐ形で一部拡充されました。詳しくはこちらの記事で紹介しておりますので、参考にしていただければ幸いです。

新創業融資制度が廃止!?新規開業資金が変わります!事業を新たに始められる方が資金調達をする際、日本政策金融公庫(以下「公庫」)からの融資をご検討されることはよくあることかと思います。 ...

日本政策金融公庫が実施している新規開業資金を利用したいものの、自己資金がないため申込めないと考えていませんか。
結論から述べると、新規開業資金は自己資金なしでも申し込めることがあります。
この記事では、自己資金なしで申し込める条件と自己資金が不足した場合の対処法を紹介しています。

監修:駒田 裕次郎
駒田会計事務所【コマサポ】代表

【来歴】大手監査法人の経験を活かし、創業支援・補助金サポートを中心とする「駒田会計事務所」を東京・渋谷に設立。資金調達や事業計画の作成、税務や経営相談まで顧客に寄り添うきめ細やかなサポートを提供。
【実績】創業融資・補助金の支援実績は、累計3,000件以上(2025年1月末現在)
【所有資格】公認会計士・税理士・認定支援機関
「一人ひとりの起業家の成功を願い、日本の未来を明るくする」をモットーに、日々奔走。


日本政策金融公庫の新規開業資金は自己資金なしでも利用できるケースがあります。ただし、自己資金がある方が審査に通りやすいのは事実です。自己資金が十分でなくてもサポートできますので、公庫への申込みの前にお気軽にご相談いただければと思います。

 

自己資金とは?日本政策金融公庫は自己資金なしでも借りられる?

創業時に幅広く利用されている日本政策金融公庫の融資制度が「新規開業資金」です。新規開業資金は自己資金なしでも利用できるのでしょうか。

新規開業資金の利用条件

日本政策金融公庫 国民生活事業では、女性の方、35歳未満または55歳以上の方の創業を「新規開業資金」にて支援しています。本資金は特別利率でご利用いただけます。

創業期の方(新たに事業を始める方または事業開始後税務申告を2期終えていない方)はこちらもご覧ください。

公庫の「新規開業資金」の主な利用条件は以下のようになっています。

  • 新たに事業を始める方
  • 事業開始後おおむね7年以内の方のうち、女性または35歳未満か55歳以上の方

自己資金なしでも利用できるケースはある

変更ポイント①:自己資金要件の撤廃

「新創業融資制度」「新規開業資金」を組み合わせて利用する場合には創業資金総額の10分の1以上の自己資金(事業に使用される予定の資金を指す)を用意する必要がありました。
改正により、「新規開業資金」ではその自己資金を用意できなくても融資に申込み出来るようになりました。

変更ポイント②:融資限度額の拡大

これまで「新創業融資制度」「新規開業資金」を組み合わせて利用する場合であれば、7,200万円(うち運転資金4,800万円)ではなく3,000万円(うち運転資金1,500万円)が融資限度額となっていました。

しかしながら、今回「新創業融資制度」の廃止され「新規開業資金」のみを利用することと  なり、実質融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)に拡大されました。

なお、「新規開業資金」では新たに事業を始める方または事業開始後税務申告を2期終えていない方は、原則として無担保・無保証人にて融資を受けることが出来るようになっています。

補足:自己資金とは

ここまで、新規開業資金における自己資金の必要性について解説してきましたが、自己資金とはどのようなお金なのでしょうか。人によりとらえ方が異なる可能性があるので、改めて整理します。自己資金の最も簡単な説明は、「誰にも返さなくてよいお金」です。例えば、自身の給料をコツコツ貯めて作った資金などが該当します。第三者から借りたお金は、自己資金といえません。

自己資金が不足したら?

日本政策金融公庫が実施している新規開業資金は、制度上は自己資金要件がなくなるため、自己資金なしで利用できます。ただし、一般的には自己資金があった方が融資の審査上は有利と考えられます。では自己資金が不足する場合、どうすればよいのでしょうか。

融資限度額の目安

一般的な融資限度額は、自己資金の3~4倍程度とされています。つまり、自己資金が100万円であれば300~400万円程度、200万円であれば600~800万円程度、300万円であれば900~1,200万円程度が融資限度額と考えられるのです。

新規開業資金の融資上限額は7,200万円ですが、誰でも7,200万円の融資を受けられるわけではありません。当然ながら、融資額は用意している自己資金額に影響されます。

自己資金が不足した場合の対処法

希望する融資限度額に対し自己資金が不足していると考えられる場合は、受けられる融資額に合わせて事業計画に変更することが勧められます。あるいは、すでに事業に使ったお金とみなし自己資金として認めてもらうこと、贈与契約書を作成したうえで親などから贈与を受けて自己資金を増やすことなども考えられます。

ただし、贈与されたお金は自己資金として認められない恐れがあります。贈与者の経済状況によっては、返還を求められることがあるからです。自己資金が不足する場合は、いずれかの対策を講じるとよいかもしれません。以上のほかでは、説得力のある事業計画書を作成しアピールする、起業したい業種での経験をアピールするなどでリカバリーできることもあります。

自己資金になるもの・ならないもの

手元にあるお金は自己資金になるものとならないものがあります。どのようなお金が自己資金になるのでしょうか。

自己資金になるものは、「返さなくてよい出所のはっきりしたお金」です。具体的には、以下のお金などが自己資金としても認められます。

・貯蓄の過程が通帳などで確認できるお金
・生命保険の解約返戻金など
・親や兄弟から贈与されたお金
・資産を売却したお金(売却の経緯がわかるもの)

反対に「返さなければならないお金」「出所のわからないお金」は自己資金として認められません。具体的な例は以下の通りです。

タンス預金
家族や知人などから借りたお金
他の金融機関から融資されたお金
通帳に入金されている出所を説明できないお金

いずれ返さなければならないお金やどのように貯めたかわからないお金は、基本的に自己資金と認められません。

自己資金に関する注意点

最後に、自己資金に関する知っておきたい知識を紹介します。

見せ金は厳しくチェックされる

自己資金を多く見せるため、一時的に借りたお金を見せ金といいます。返済が必要なお金なので見せ金は自己資金に含まれません。ばれないだろうと思うかもしれませんが、日本政策金融公庫などは通帳をチェックするためすぐにばれてしまいます。見せ金で自己資金を一時的に増やすことは控えましょう。

資金を移動させるときは注意

自己資金を増やすため、自分で貯めたお金をひとつの口座にまとめることがあるはずです。創業前にまとまったお金を移動させると、見せ金だと誤解されることがあります。まとまったお金を移動させるときは、どのように用意したものか説明できるように資料などを用意しておきましょう。

日本政策金融公庫の融資制度を利用するときは、新規開業資金でも自己資金を用意した方が良い

日本政策金融公庫の融資制度を利用するには、基本的に自己資金が必要です。

一方、新規開業資金では、制度上、自己資金なしでも利用できるケースはありますが、自己資金がないと融資額は少なくなることが予想されます。

また、自己資金がある場合と比べると融資の審査は厳しくなることが予想されます。そのため、自己資金はできるだけ多く用意するほうがよいでしょう。

自己資金が不足する場合は、事業計画を変更する、親などから贈与を受けるなどの対策が考えられます。有効な対策が見当たらない場合は、創業融資の専門家に相談するとよいかもしれません。万全の対策をとったうえで、日本政策金融公庫の融資制度に申込みましょう。

まとめ

今回は、日本政策金融公庫の新規開業資金の制度と自己資金について、スポットをあててご説明してきました。
新規開業資金を利用するために自己資金が必要だと思われがちですが、日本政策金融公庫の融資制度では自己資金なしでも申し込める場合があります。
特に「新規開業資金」では、新創業融資制度の廃止に伴う拡充により自己資金がなくても申込が可能となり、融資限度額も拡大されています。
しかし、自己資金がない場合、審査が厳しくなり、融資額も少なくなる可能性があるため、できる限り自己資金を準備した方が有利です。
自己資金が不足する場合は、事業計画を見直す、贈与を受ける、または創業経験をアピールするなどの対策が考えられます。しっかりと対策を講じたうえで、専門家のアドバイスを受けることもおすすめです。

「コマサポの創業サポートナビ」を運営する駒田会計事務所は、これから創業される方・創業5年以内の皆様に対して、創業時における資金調達のサポートを行っております。日本政策金融公庫の創業融資の支援を始め、多くの創業融資のサポート実績があります。

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駒田会計事務所 【コマサポ】  代表
 公認会計士・税理士 認定支援機関
 駒田 裕次郎

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