【完全ガイド】創業時の資金調達方法と選び方のコツを徹底解説~補助金から融資まで紹介します
・創業時の資金調達方法を「融資」「出資」「助成金・補助金」の3つに分類し、それぞれの特徴やメリット、注意点を解説
・資金調達手段の選択は、事業内容や規模に応じて適切に行うことが重要。
・手続きに不安がある場合は専門家への相談が効果的。

監修: 駒田 裕次郎(こまだ ゆうじろう)
駒田会計事務所 【コマサポ】代表
【来歴】大手監査法人の経験を活かし、創業支援・補助金支援を中心とする「駒田会計事務所」を東京・渋谷に設立。資金調達や事業計画の作成、税務や経営相談まで顧客に寄り添うきめ細やかなサポートを提供。
【実績】創業融資・補助金の支援実績は、累計3,000件以上(2025年1月末現在)
【所有資格】公認会計士・税理士・認定支援機関
「一人ひとりの起業家の成功を願い、日本の未来を明るくする」をモットーに、日々奔走。
目次
創業時の資金調達では、専門家のサポートを受けることで成功率が高まります。手続きに不安がある場合や、最適な方法に迷っている場合は、専門家への相談が効果的です。弊社では創業融資のサポートを行っており、スムーズな資金調達を支援します。各種金融機関・融資先へのご連絡前に、ぜひ弊社までお気軽にお問い合わせください。
創業・開業時に利用できる主な3分類~事業に適した資金調達を
事業を始める際の資金調達にはさまざまな方法がありますが、大きく分けて「融資」「出資」「助成金・補助金」の3つです。
それぞれ調達できる金額や返済義務の有無が異なります。特に、融資を受ける場合は元本に利息を加えて返済が必要ですが、補助金や助成金、投資などの方法では基本的に返済の義務がありません。
また、資金調達の手段には、創業時に適したものや、事業拡大・経営安定のために向いているものがあり、目的に応じて適切に選ぶことが重要です。
それぞれの資金調達方法の特徴を理解し、自身の事業に最適な手段を見極めましょう。
今回の記事では、具体的な資金調達の方法について、メリットと注意点を交えながら詳しく解説していきます。多様な選択肢の中から、自社の規模や事業内容に合った方法を検討してみてください。
創業の資金調達とは
資金調達の目的
資金調達とは、会社設立時などに必要な資金を集めることです。事業運営に必要な現金を確保し、支払い活動や投資に充てることで、事業の成長を支えます。手元に資金を確保することは経営の安定性を高めるとともに、ビジネスのスピード感を保つためにも欠かせません。
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また、起業後には予期しない費用が発生することが多く、そのための予備費を確保しておくことが重要です。さらに、会計上は黒字であっても、現金が不足する「黒字倒産」のリスクに直面する可能性もあるため、余裕を持った資金確保が必要不可欠です。
創業時に必要な資金調達の目安金額
では、実際にどの程度の創業費用が想定されるのでしょうか。日本政策金融公庫が1991~2023年まで行った新規開業実態調査のデータを見てみましょう。
起業費用の平均値は1,027万円、中央値は550万円、資金調達額の平均は1,180万円。この中央値550万円が一般的な起業資金の目安と考えられます。
また、以下の表から、金融機関等からの借り入れと自己資金によるものが大半で、自己資金の平均は280万円。金融機関等からの借り入れが平均768万円で、全体の65.0%を占めることがわかります。

※グラフともに日本政策金融公庫総合研究所 2023年「新規開業実態調査」より
新たに会社を立ち上げる際には、その規模によっては土地の購入や建物の建設、機械設備の導入、オフィス機器の調達など、多くの初期投資が必要です。さらに、製品の開発や製造費、販促活動にかかる広告宣伝費も考慮すると、かなりの額の資金を確保する必要があります。
もちろん、業種や業態によって必要な起業資金は異なりますので、具体的な資金計画を立てることが先決です。
創業・起業時の資金調達方法①「出資」
出資とは、事業の成長を見込んで投資家や支援者が資金や資産を提供する方法です。出資にもいくつかの形態がありますので、以下順にご紹介していきます。
自己資金
自己資金とは、起業以前の給与や副業の収入などを貯めて事業資金として活用する方法で、最も基本的な資金調達手段です。
メリット
- すべて自分の資金のため、経営権を100%保持でき、自由に経営判断ができる
- 金利負担がなく、借入れに伴う返済の義務がない
- 資金提供者とのトラブルが発生するリスクがない
注意点
- 用意できる資金に限りがあるため、大規模な事業展開が難しい
- 事業が失敗した場合、自身の資産を失うリスクがある
自己資金は、外部からの影響を受けずに経営できる点が大きな強みですが、資金規模が限られるため、他の調達方法と併用することも検討するとよいでしょう。また、事業清算をした場合、自分の資産を失うことになるので注意が必要です。
自己資金なしでの起業は可能?
自己資金がなしでの起業は、結論から言うと事業の種類によっては可能です。しかし、資金不足に陥りやすく、自身の病気や事故を含めた想定外のトラブルに対応できないリスクが高まります。また、外部からの融資や出資を受ける際、信用力の不足により審査が厳しくなったり、取引先からの信頼を得にくかったりする懸念もあります。
自己資金なしでの起業を考える場合は、融資制度を上手に活用しましょう。特に、事業実績のない創業時は民間の金融機関では審査が厳しくなるため、公的金融機関の融資を検討するとよいでしょう。具体的な融資制度については、次の章で詳しく解説します。
なお、自己資金なしで融資を申し込む際の注意点などについては、こちらの記事もご参考ください。

家族や親戚から贈与を受ける
起業時の資金調達方法のひとつに、家族や親戚からの援助を受ける「贈与」があります。自己資金を増やす手段として有効ですが、税制面などいくつかの注意すべき点があるので事前に確認と対処が必要です。
贈与を受ける際の注意点
- 贈与契約書の作成
贈与を証明するため、贈与日や贈与者(資金を渡す側)、受贈者(資金を受け取る側)、贈与額を明記した「贈与契約書」を作成し、双方で取り交わしておきましょう。これにより、資金提供が正式な贈与であることを明確にできます。 - 贈与税の負担
年間110万円を超える贈与には贈与税がかかるため、多額の資金を受け取る場合は、税負担を考慮する必要があります。計画的に贈与を受けることで、税負担を抑えることも可能です。 - 自己資金としての扱い
贈与された資金は、基本的に自己資金として認められることが多いですが、親などからの借入金は「借入」とみなされ、自己資金とは区別されます。融資の審査などに影響を与えるため、資金の性質を明確にしておくことが重要です。
不動産や財産を現物出資として申告する
現物出資は、会社を設立する際に現金ではなく、不動産や車などの物理的な資産(形のある財産)を資本金として提供する方法です。この方法を利用できるのは、会社設立の発起人のみとなります。
例えば、個人事業主が法人化する際にも、現物出資を活用して現金ではなく、所有している不動産や設備を資本金として会社に提供することが可能です。現金の用意が難しい場合でも、所有する資産を資本金として活用できるため、法人化をスムーズに進めることができます。
ベンチャーキャピタル(VC)
ベンチャーキャピタル(VC)は、事業会社や投資家から集めた資金を、急成長が見込まれるスタートアップや企業に投資を行うファンドです。出資を受ける代わりに株式を取得します。返済義務はなく、企業が成長して上場した際に株式を売却して利益を得ます。主に、短期間で急成長を期待できる企業が投資対象となり、安定した成長を目指す企業は対象外です。
メリット
- 経営アドバイスやビジネスパートナーの紹介などのサポートを受けれる場合もあります。
- 短期間での急成長が可能になり、上場を目指すための資金やサポートが得られます。
注意点
- 起業家の持ち株比率が低下するため、経営権の一部を失うことになる
- 企業の実績や将来性が重要な要素となるため、立ち上げ直後の企業にとっては、VCからの資金調達は難しい場合が多い
- 経営方針や方向性にも影響を及ぼすことがあり、起業家はその方針に従う必要がある
起業前及び直後には資金調達が難しいことも多く、また急成長を目指す企業にとって重要な資金源ですが、株式の希薄化や経営方針への影響にも十分注意が必要です。
エンジェル投資家(個人投資家)
エンジェル投資家とは、将来の成長が期待されるスタートアップやベンチャー企業に個人資金で投資する投資家のことです。VC(ベンチャーキャピタル)と異なり、エンジェル投資家は個人の資産を投資に用います。そして、名前の由来通り、自己の経験や人脈を活かして、新たな起業家を支援することを目的に、引退した起業家や経営者が投資を行うケースが多くみられます。メリット、デメリットにはVCと共通する点も多くあります。
メリット
- 経営アドバイス、顧客やビジネスパートナー等の紹介を期待できる
- 個人の判断によるため出資までのスピードが速い
注意点
- 多額の出資は難しい
- 起業家の保有株比率が下がる ※印はVCと同様。
- 起業直後の資金調達は期待しづらい ※
- 経営の自由度が下がる ※
クラウドファンディング
オンラインで事業を紹介し、不特定多数の個人から資金を集める方法です。寄付型・購入型・融資型などの種類があり、審査なしで資金調達が可能な点が特徴です。クラウドファンディングサイトに登録し、事業の詳細や目的を公開して支援を募ります。
事業のニーズ調査や認知向上にも活用できますが、出資者へのリターン提供の計画や目標金額未達のリスクを考慮する必要があります。資金獲得後も支援者への報告が求められますが、事業のPRにつながる点はメリットといえます。
メリット
- 大きなリスクを伴わずに資金調達に挑戦できる。
- 起業前から広範なファン層を築き、支援を得ることができる。
- 市場調査やテストマーケティングを行いながら認知度を向上させることができる。
注意点
- 特徴的なストーリーやアイデアがなければ、資金調達が難しい。
- 目標金額に達しない場合、資金を得られないリスクがある。
- 出資者へのリターンを計画しなければならず、実行の手間がかかる。
ビジネスコンテストへの参加
ビジネスコンテストは、官公庁や企業が主催し、新規性や成長性などの観点から事業計画を審査するもので、入賞すれば賞金や資金援助を得ることができます。審査員の意見をもとに事業計画を改善できるほか、アイディアを発表することで認知度を高め、人脈を広げる機会にもなります。ただし、アイディアの流出リスクや、プレゼンの巧拙が結果に影響する点には留意が必要です。
開催中の主なビジネスコンテストについては、官民ともにミラサポplus 中小企業向け補助金・総合支援サイト(経済産業省・中小企業庁)から調べることができます。
コンテスト名 | 主催者 | 対象者 | 概要 |
---|---|---|---|
女性起業家大賞 | 全国商工会議所女性会連合会 | 女性経営者 | 創業期(創業から10年未満)の女性経営者で、日々、経営革新・創意工夫に果敢に取り組み、他の女性経営者の範となる企業経営・事業展開・事業発展等に実績を挙げている方。 |
女性のチャレンジ賞 | 内閣府 男女共同参画局 | 女性起業家 | 起業、NPO法人での活動、地域活動等にチャレンジしている女性個人・団体を顕彰。 |
出資のメリットと注意点
出資の最大のメリットは、融資とは異なり返済の義務がないことです。ただし、利益が出た場合は出資者への分配が必要となるほか、株式を発行する場合、出資比率によっては経営の意思決定に影響を及ぼす可能性があります。経営の自由度が狭まるリスクもあるため、出資者との関係は慎重に構築することが重要です。
創業・起業時の資金調達方法②「借入・融資」
もうひとつの大きな資金調達法として挙げられるのが、金融機関などからの融資や借入です。融資は、借りた資金を一定の期間内に利息を含めて返済する必要があるため、慎重に計画を立てることが重要です。
融資を受けるには、事業の将来性や返済能力を示す必要があり、審査を通過しなければなりません。特に起業直後は、信用力の面でハードルが高くなることもありますが、適切な融資制度を選ぶことで資金調達が可能になります。
それでは順に、起業・開業時に活用できる主な融資制度について解説していきます。
日本政策金融公庫の融資制度
日本政策金融公庫とは
日本政策金融公庫とは、国が100%出資をする政策金融機関です。中小企業・小規模事業者や農林漁業者など、事業に取り組む方々の支援を目的としています。中小企業向けの融資に特化し、特に新規開業者やベンチャー企業に対する支援が充実しています。低金利での融資や、無担保での融資も行っており、民間の金融機関からは資金調達が難しい企業の支援に力を入れています。
新規開業資金制度
日本政策金融公庫が提供する融資制度の一つで、新規に事業を始める方や、事業開始後まだ2期分の税務申告を終えていない方を対象としています。女性・若者・シニア層や、過去に廃業を経験し再チャレンジする方などには有利な条件も設定されており、幅広い創業者を支援する制度です。
新規開業資金制度は、資金調達が難しい創業期の事業者に対し、必要な資金を提供することで、地域経済の活性化を促す役割を担っています。起業家や中小企業が事業を軌道に乗せ、成長していくための重要な資金源となる役割も果たしています。
対象者 | 新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方 |
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資金使途 | 新たに事業を始めるため、または事業開始後に必要とする設備資金および運転資金 |
融資限度額 | 7,200万円(うち運転資金4,800万円) |
返済期間 | 設備資金20年以内 運転資金10年以内 ※うち措置期間5年以内 |
措置期間=融資を利用した際に、元本の返済が猶予される期間のこと。この期間中は利息のみを支払えばよく、資金繰りの心配をせず事業に集中できる反面、トータルで支払う利息の額が大きくなるデメリットもある。 |
新規開業資金制度の主な優遇制度 | |
女性・若者/シニア起業家資金 女性、35歳未満または55歳以上、廃業歴があり創業に再チャレンジするなどに該当する場合は、優遇金利が適用されたり、返済期間が延長されるなど優遇措置が受けられます。 | |
中小企業経営力強化関連 「中小企業の会計に関する基本要領」または「中小企業の会計に関する指針」を適用中または適用予定で、自ら事業計画書の策定を行い、中小企業等経営強化法に定める認定経営革新等支援機関による指導および助言を受けている場合は、同様に優遇措置が受けられます。 | |
再挑戦支援関連 廃業歴等があり、創業に再チャレンジする方で、以下の3条件を満たす場合、優遇措置が受けられます。
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日本政策金融公庫に強いコマサポについてはこちらをご覧ください
マル経融資
商工会議所や商工会などの経営指導を受けている小規模事業者の商工業者が、経営改善に必要な資金を無担保・無保証人でご利用できる制度です。利息が低いことが特徴ですが、創業一年以後しか利用できず、商工会への加入も必要となります。
対象者 | 商工会、商工会議所又は都道府県商工会連合会の実施する経営指導を受けている小規模事業者(商工業者に限る。)であって、商工会、商工会議所等の長の推薦を受けた方 |
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資金使途 | 経営改善 |
融資限度額 | 2,000万円 |
返済期間 | 10年以内 ※うち措置期間2年以内 |
新規開業資金で融資を受ける場合の主なメリット
日本政策金融公庫が提供する融資の中で、創業時に一番おすすめな融資は、この「新規開業基金」です。具体的にどのようなメリットがあるのか、詳しくご説明していきます。
1.担保・保証人を不要にできる
法人・個人事業主問わず、原則無担保・無保証となっています。一般的な金融機関では担保や保証人が必要となりますが、公庫の場合、創業期の場合、原則として無担保・無保証人で各種融資制度を利用することができます。
つまり、経営破綻しても経営者個人に返済義務が生じないため、万一の場合のリスクを減らすことができます(※ただし、融資額が高額、事業のリスクが高い、既存の借入や返済履歴に問題がある等の場合には、担保や保証人が必要となる場合があります)。
2.融資限度額が大きい
前述の制度融資と比較しても、融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)と高額に設定されています。なかでも、会社運営のために使えて用途に柔軟性のある「運転資金」の上限が4,800万円と、利用者には自由度のあるありがたい内訳となっています。
3.融資申請から実行までの期間が短い
一般的には、申込から1カ月~1カ月半程度で資金を調達できると考えられています。自治体の承認や信用保証協会の審査を必要としないため、一般的な金融機関や制度融資と比較してもスピーディに融資が受けることが可能です。
4.銀行に比べて金利が安い
日本政策金融公庫の金利は0.5~3.8%(2024年6月1日現在)ですが、銀行の金利は1~5%程度です。1/2~1/10程度と金利が非常に安く設定されています。また、女性やシニアなど、条件によって一般的な条件よりも低金利で融資を受けられることも大きなポイントです。
5.融資の金利が上昇しない
公庫融資では「固定金利」を採用しており、経済情勢により金利が上昇することはありません。よって、返済額が変わらないため返済計画を立てやすくなります。変動金利の融資では経済状況や政策金利の影響を受け、返済中に金利が高くなるケースも多く見られますが、金利変動の不安がないこともメリットのひとつです。

6.長期的な返済が可能
返済期間は融資制度により異なりますが、運転資金では約7年、設備資金では10~20年となっています。民間の金融機関より長期に渡る返済が可能となることから、創業初期の返済負担を抑えて計画的に資金を活用しやすくなります。

7.民間金融機関と審査基準が異なる
日本政策金融公庫の融資の目的は「中小企業の創業・経営支援」であるため、民間金融機関とは異なる審査基準を設けています。よって、民間金融機関では融資を受けられなかった企業であっても、公庫融資の審査に通過する可能性は残されています。
8.民間金融機関からの融資が受けやすくなる
日本政策金融公庫からの融資実績があることは、民間金融機関にとって信用情報の一つとみなされ、融資条件を満たす重要な要素となります。そのため、公庫融資を利用する前よりも利用後の方が、民間金融機関からの融資が受けやすくなる傾向があります。
公庫融資を活用して実績を積むことは、将来的に民間金融機関からの融資を検討している人にとって、大きなメリットとなるでしょう。
9.事業拡大にむけての実績となる
通過率が1~2割ともいわれる公庫融資を獲得したということは、厳しい審査を経て「信用に値する事業」と評価されたことを意味します。この実績は、次回の融資や事業拡大において強力なツールとなるでしょう。資金調達の手段としてだけでなく、「戦略的融資」として公庫融資を活用することを検討してみてはいかがでしょうか。
10.創業後も融資の申請を行うことが可能
事業開始後おおむね7年以内であれば、「新規開業資金制度」の申請が可能です。起業直後の資金不足や、事業拡大のための仕入費用や設備投資に資金が必要な場合でも、融資を受けられる可能性があります。
一方、当社の事例ではありませんが、創業後約半年で実績不足から資金繰りに苦しむものの、公庫の創業融資で乗り切り、その後業績を回復させたケースもあります。売上実績が不足していると、制度融資やその他金融機関からの融資を得ることは創業前よりも困難になりますが、公庫では将来性を評価して融資が可能となる場合もあります。
とはいえ、創業後に約6割以上の創業者が想定外の出費を経験したというデータもあります。こうした緊急事態を防ぐためにも、運転資金を含めた起業資金をあらかじめ試算し、創業前から融資の準備や対策をしておくことが賢明と言えるでしょう。
新規開業資金で融資を受ける場合の主な注意点
以上のように、メリットの非常に多い魅力的な新規開業資金ですが、注意が必要となる点もいくつかあります。
1.提出書類が多く、準備が煩雑となる
融資の申し込みには、借入申込書・事業計画書・履歴事項全部証明書もしくは登記簿謄本・設備見積書・月別収支計画書・賃貸借契約書もしくは賃貸借予約契約書などが必要となります。
融資を申し込む際に、「認定支援機関」への相談も視野に入れると効率的に申請を進めることができます。
専門的な書類が多岐にわたるため、多忙な起業主が個人ですべての準備を整えるのは大変な作業です。認定支援機関とは?
「認定経営革新等支援機関」の略称。スタートアップ、中小企業や小規模事業者を支援する専門家や、経営の相談相手として国が認定した公的な支援機関。税務、金融及び企業の 財務に関する専門的知識を有し、一定の経験年数を持った金融機関、税理士、公認会計士、弁護士などを指します。
2.審査基準が厳しい
創業者本人の信用力が重視されるなど、無担保・無保証とはいえ、創業者本人の信用情報や過去の金融履歴が審査に影響を与えることがあります。過去の借入や返済状況によっては融資が難しくなることもあります。また、審査では事業の実現可能性や収益性が厳しくチェックされるため、申請書類等準備不足の場合も同様に、融資を受けるのが難しくなります。
審査に通るポイントを押さえた事業計画書の作成サポートを受けることができます。また、公庫の融資申請では、起業家個人からの申請と認定支援機関を通じた申請で対応が異なります。認定支援機関を通じた申請には一定の信頼性が伴うため、金融機関としても取り扱いやすく、審査に通過しやすくなります。
同様に、認定支援機関を利用することで、3.融資が決まるまでの審査期間が長い
申し込みから実際に融資を受けるまでの期間は、平均して3週間~1か月程度となります。資金調達に急を要する場合には、融資以外の方法を検討することも考えましょう。
4.制度融資に比較すると若干金利が高い
後述する「制度融資」など自治体が実施している融資制度に比べると、金利がやや高く設定されていますが、民間金融機関の融資と比較すれば、金利はかなり低いといえます(上記参照)。また、信用保証協会付き制度融資の場合は、信用保証協会への信用保証料の支払いが必要となるので、一概に金利の数字のみでは判断ができません。
自治体・金融機関・信用保証協会による制度融資
信用保証協会とは
信用保証協会とは中小企業や小規模事業者の金融を円滑にすることを目的とした公的機関で、全国47都道府県と4市(横浜市、川崎市、名古屋市、岐阜市)にあります。創業直後で資金や信用に乏しい中小企業・小規模事業者の方が融資を受ける際に、保証協会が金融機関との間に立って「信用保証書」を発行し、金融機関への返済を保証する役割を担っています。
制度融資とは
信用保証付き融資の一部であり、特に地方自治体が金融機関、信用保証協会と提携し、実施している融資制度のことを言います。信用保証協会が創業間もない会社の債務を保証することで、金融機関からの融資が受けやすくなります。信用保証協会の審査を受けた上で、地方自治体の斡旋により地方銀行や信用金庫・信用組合から有利な条件で融資を受けます。また、制度融資は、信用保証協会の保証が付くため「信用保証付き融資」と呼ばれることもあります。

「都道府県制度」「市区町村制度」など、年間金利や融資限度額など諸条件は自治体によって違いがあり、自治体がそれぞれ独自の融資制度を設けて起業家をサポートしています。詳細については、個別に問いあわせが必要です。
代表的な制度融資 |
東京都:東京都中小企業制度融資「創業」 |
大阪府:「開業サポート資金」 |
東京都渋谷区:区の中小企業事業資金融資あっせん制度 |
東京都新宿区:新宿区中小企業向け制度融資 |
東京都千代田区:千代田区商工融資あっせん制度 |
東京都中央区:中央区商工業融資 |
神奈川県:創業支援融資 |
愛知県名古屋市:名古屋市信用保証協会の信用保証付き融資制度 |
制度融資の主なメリット
1.審査に通りやすい
万が一倒産した場合には金融機関ではなく信用保証協会が残債を肩代わりするのが制度融資の仕組みです。これにより金融機関にとって貸し倒れリスクが低くなるため、審査に通過する可能性も一般の金融機関の融資より高くなります。ただし、新規開業基金とどちらが通りやすいかは、一概に言えません。
2.金利が非常に安い
民間金融機関の融資に比べ、利率が低い点もメリットとして挙げられます。公的な創業融資になかでも、制度融資は特に金利が低い場合が多く、金利は1.0~3.0%程度、中には1%未満のケースもあります。据置期間についても3ヶ月~1年程度用意されていることが多いです。ただし、具体的な利率は自治体により異なるため、詳細を調べたうえで利用することが重要です。
3.自治体が保証料や利息の一部などを負担してくれるケースがある
自治体によっては、信用保証協会に支払う保証料、利息の一部を補助してくれるところもあります。ですが、利率と同様に、補助の内容は自治体によって異なります。
4.地域の金融機関と繋がりが持てる
事業を展開する中で、今後、地域の民間金融機関からの借入を検討する場面があるかもしれません。そのため、地域の金融機関の担当者とのつながりを築くことが重要です。融資や返済の実績を重ねることで信頼関係を構築し、次回以降の融資に結びつけることが期待できます。
5.融資枠を拡大できる可能性がある
信用保証協会の保証が付くため金融機関からの融資が受けやすくなり、通常の融資と保証付き融資を併用できれば融資枠を拡大できる可能性もあります。
制度融資の主な注意点
1.融資が下りるまでに時間がかかる
都道府県や市区町村での斡旋書の入手、金融機関の審査、保証協会の審査(金融機関、保証協会それぞれで審査が必要)と三段階を経るため、融資の申請から実施まで約3か月程度要することもあります。
2.経営者本人が保証人になる必要がある
制度融資では、多くの場合、個人保証が求められます。そのため、法人として融資を受けた場合、倒産した際には個人的な返済義務が発生します。一方、連帯保証については、保証協会が保証人になるため基本的に不要です。法人や個人事業主を問わず、原則として無担保・無保証で利用できる新規開業資金制度とは大きく異なる点です。
3.利用料として信用保証協会に対して保証料を支払わなければない
信用保証を利用する場合、保証協会に信用保証料を支払う必要があります。
この信用保証料は「信用保証委託に対する対価」であり、「保険料」ではありません。そのため信用保証協会が金融機関に代位弁済を行った場合は、融資を受けた事業者は信用保証協会に対して返済義務を負うことになります。
代位弁済=債務者が返済できない場合に、第三者がその債務を肩代わりして返済する行為
4.自治体により制度設計が異なる
自治体ごとに制度内容が異なるため、対象者、融資限度額、融資期間、利率などを、それぞれの自治体で確認しなければなりません。また、都道府県や市区町村によっては、自分に適した条件の制度融資がない場合や、条件を満たせず利用できない場合もあります。利用できる制度が複数ある場合は、比較して最適なものを選ぶ必要があるなど、制度の概要がわかりにくい点もデメリットとしてあげられます。
銀行、信用金庫からの融資(プロパー融資)
プロパー融資は、保証協会を利用せず、銀行や信用金庫など金融機関から直接融資を受ける方法です。融資を受ける側と金融機関が直接契約を結び、万が一返済不能になった場合、金融機関が100%リスクを負います。
プロパー融資の主なメリット
借入金額に限度がなく、保証協会付き融資には必要となる「保証料」が不要です。また、融資の返済を続けることで、銀行との信頼関係が築ける可能性もあります。銀行との長期的な関係を考えるなら、少額(300万円以下)からの融資も検討してみると良いでしょう。
プロパー融資の主な注意点
1.審査が厳しい
2.金利が高い傾向にある
日本政策金融公庫の融資は金利が最大でも約4%、制度融資は約2%ですが、銀行融資では最大5%程度になることもあります。さらに、ビジネスローンやフリーローンを利用する方法もありますが、審査が比較的通りやすい反面、金利が10%以上と高く設定されるケースがあるため注意が必要です。
創業・起業時の資金調達方法③「助成金・補助金」
混同されやすい助成金と補助金ですが、以下のような違いがあります。
補助金 | 助成金 | |
---|---|---|
概要 | 政府や自治体が提供する資金援助で、返済の必要なし。 多くは特定の事業分野や目的に対して支給。 | 労働者の雇用や研修、新技術開発などを促進するために支給される資金。 返済義務はなく、特定の条件を満たす場合に支給。 |
特徴 | ・事業計画や成果報告が求められ、審査を通過する必要がある。 ・条件に合う事業内容に対して支給されるが、支給金額に上限あり。 ・内容や応募要件の変更が多い。 ・審査が厳しく、後払い制で着金まで半年以上かかる。 ・要件を満たさない場合、一部返還の必要あり。 | ・従業員を雇う場合や、特定の事業支援を受ける際に利用可能。 ・申請が承認されると、指定された用途に対して資金が支給される。 ・後払い制で着金まで1年以上かかるが、条件が合えば必ず支給される。 |
【助成金】地域中小企業応援ファンド(スタート・アップ応援型)
地域中小企業応援ファンドは、中小企業者や創業者を支援するために、中小機構や地方自治体、金融機関などが出資して設立されたファンドです。主に、地域経済の発展を促進するため、「地域中小企業応援ファンド」「農商工連携型地域中小企業応援ファンド」の二つのファンドがあります。
これらのファンドは、返済義務がないため、助成金として扱われます。地域や事業内容によって支援の内容や条件が異なるため、具体的な詳細は公式サイトでご確認ください。
【補助金】ものづくり補助金
ものづくり補助金とは、中小企業や小規模事業者が、新製品・サービスの開発や生産プロセスの改善を行う際に必要な設備投資を支援する補助金です。生産性向上や競争力強化を目的とし、革新的な取り組みを後押しします。
詳しくはこちらでご紹介しています。
【補助金】事業再構築補助金
新市場進出(新分野展開)や業態転換、事業・業種転換などの取組みに対する補助金(最大1億円)です。
設備費・システム導入費のほか、建物の建築・改修費、広告宣伝費等も対象になります。2025年の第13回公募が最後となります。
詳しくはこちらでご紹介しています。
【補助金】中小企業新事業進出補助金
中小企業新事業進出補助金とは、既存の事業とは異なる、新市場・高付加価値事業への進出にかかる設備投資等を支援する補助金です。企業の成長・拡大に向けた新規事業への挑戦を行う中小企業等を対象としています。
詳しくはこちらでご紹介しています。
【補助金】IT導入補助金
IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者が業務の生産性を向上させるために、ITツールを導入する際の費用を一部補助する制度です。主に、ソフトウェアの購入やクラウドツールの利用などに活用することができます。
【補助金】小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者が新たな販路開拓を目指す際に発生する経費の一部を支援する制度です。日本商工会議所が管轄しており、各地域の商工会議所によって申請条件が異なります。対象となるのは、商工会議所の管轄内で事業を営む小規模事業者と、特定の条件を満たすNPO法人です。
補助金・助成金のメリット・注意点
メリット
助成金や補助金は原則として返済義務がなく、事業の成長を支援してくれるため、資金調達の負担を軽減できます。また、審査は厳しいものの、要件を満たすことで支給される金額が大きいのが特徴です。起業や開業前後のどちらでも申し込むことが可能で、状況に応じて活用できます。
注意点
申請から支給までには数か月以上かかることが多く、着金までに数ヶ月~半年以上かかることもあります。また、通常は事業に必要な費用を先に負担した後に支給されるため、キャッシュフローに影響を与える可能性があります。そして、 審査や予算に制約があるため、必ずしも申請が採択されるわけではありません。特に補助金に関しては、要件を満たしても予算の都合や競争の激しさから、受給できない場合もあります。
申請書類も多岐にわたるため、効率的・効果的に申請を行うには、専門機関への相談をするのが得策といえます。
創業時の資金調達を順調に進めるためには?ポイントと注意点
創業時の資金調達は、事業の立ち上げを左右する重要なプロセスです。計画的に進めることで、資金繰りの不安を和らげ、安定したスタートを切ることができます。資金調達の成否が、その後の事業の成長に大きな影響を与えると言っても過言ではありません。
この章では、創業時の資金調達を円滑に進めるためのポイントと注意点について、解説していきます。
事業の信頼性を高め、信頼関係を構築
資金調達を成功させるためには、金融機関や投資家に対して事業の信頼性をしっかりと示すことが不可欠です。そのためには、事業計画を具体的かつ明確にし、将来的な収益性や成長戦略を示すことが重要となります。また、誠実な対応や迅速な情報提供も、信頼関係を築くための大切なポイントです。
特に融資や補助金・助成金を活用する場合、事業の信頼性が成否を左右します。自社の強みや他社との違いを明確にし、審査を通過するためのアピールポイントをしっかりと押さえましょう。そのためには、競合分析を行い、自社の優位性を論理的に説明できる準備が必要です。
さらに、事業の成長可能性を示すことで、金融機関や支援機関からの信頼を獲得しやすくなります。計画の実現性や収益モデルを具体的に提示し、客観的なデータを交えることで、審査通過の可能性を高めることができます。
このように、信頼性を担保し、納得感のある事業計画を用意できれば、資金調達の成功に大きく近づきます。しっかりと準備を整え、事業の未来を支える資金を確実に手にしましょう。
自社に適した手段の選択をする
資金調達には、今回の記事でご紹介したように、さまざまな方法があります。大切なのは、事業の状況や成長段階に合わせて、最適な手段を選択することです。
日本政策金融公庫の新規開業資金や地方自治体の制度融資、さらには補助金・助成金の活用など、それぞれのメリットや注意点を踏まえ、返済負担をできるだけ抑えつつ、必要な資金を確保する選択肢を検討してみましょう。それぞれの方法には、特有のメリットと注意点があるため、事業の状況や成長段階に応じて、最適な手段を選択することが重要です。
ビジネスプランの明確化~資金調達額を明確に
資金調達を成功させるためには、どのくらいの資金が必要で、その資金をどのように活用するのかを具体的に示すことが重要です。最適な方法を選ぶためには、必要な金額や目的、タイミングを十分に考慮することが成功の鍵を握ります。
例えば、事業計画書には、創業初期の経費、運転資金、成長投資などを明記し、説得力のあるビジネスプランを作成することが必要です。このように具体的な数字を示すことで、融資担当者や投資家の理解を深め、スムーズな審査が進みます。
さらに、円滑な融資を実現するためには、資金調達の金額を明確に見積もることが欠かせません。必要な資金額によって金利負担や審査の難易度が変わり、返済プランにも影響を及ぼします。金額を適切に見積もり、返済計画をしっかりと立てることで、より有利な条件で資金調達を進めることができます。
専門家に相談、助力を得る
創業時の資金調達では、専門家のサポートを受けることで成功率を高めることができます。税理士や金融機関のアドバイザー、創業支援機関などに相談し、事業計画のブラッシュアップや融資面談の対策を行いましょう。第三者の視点を取り入れることで、計画の客観性や説得力が増します。
留意すること
余裕を持ったスケジュールを立てましょう
資金調達においては、審査に時間がかかることを念頭に置き、余裕を持ったスケジュールを立てることが重要です。スケジュールの遅れは、事業の計画にも影響を及ぼしかねませんので、余裕を持った準備が必要です。
無理なく現実的な返済計画
また、返済計画についても現実的に考え、無理のない範囲で資金調達を行うことが、事業の継続性を支える要素となります。返済負担が過剰になると、事業運営に支障をきたす恐れがあるため、現実的な金額で計画を立てることが成功の鍵を握ります。
まとめ:資金調達を成功に導くために~自分に最適な方法で事業成功への第一歩を
今回の記事では、創業時の資金調達方法についてご紹介してきました。
資金調達をスムーズに進めるためには、事業に最適な方法を選び、しっかりとしたビジネスプランを作成することが大切です。自社に合った資金調達手段を選ぶことで、安心して事業を進めることができます。さらに、余裕を持ったスケジュールと無理のない返済計画を心がけることが、事業の安定性を保つために重要です。資金調達が整えば、事業の成長に向けて強固な基盤を築き、次のステップへと進む準備が整います。
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駒田会計事務所【コマサポ】 代表 駒田裕次郎 税理士・公認会計士