- 「運転資金」は変動費と固定費に分けられる。経常運転資金、増加運転資金、減少運転資金、季節性運転資金などに分けることもできる。
- 「運転資金」は継続的に使うもの、「設備資金」は一時的に使うもの。
- 起業に必要な運転資金の相場は売上の3~6ヶ月分。
- 運転資金の調達には、スケジュール管理、自己資金、書類作成、専門家への相談がポイント。
- 起業時の資金調達には日本政策金融公庫がおすすめ。
起業をして事業を継続させるためには「運転資金」はとても重要です。どんな中身があるか知っていますか?「運転資金」と言っても、実は色々な種類があるんです!
この記事では、運転資金の基本や必要な金額の考え方、調達方法について分かりやすく解説します。起業を成功させるために、しっかりとした資金計画を立てましょう!

監修:駒田 裕次郎
駒田会計事務所【コマサポ】代表
【来歴】大手監査法人の経験を活かし、創業支援・補助金サポートを中心とする「駒田会計事務所」を東京・渋谷に設立。資金調達や事業計画の作成、税務や経営相談まで顧客に寄り添うきめ細やかなサポートを提供。
【実績】創業融資・補助金の支援実績は、累計3,000件以上(2025年1月末現在)
【所有資格】公認会計士・税理士・認定支援機関
「一人ひとりの起業家の成功を願い、日本の未来を明るくする」をモットーに、日々奔走。
創業計画書などの書類を作成する上でも、運転資金についての理解は必要です。コマサポでも融資を受ける際の書類作成などサポートしておりますので、お悩みの際はぜひ一度ご相談ください。
運転資金とは
運転資金とは、事業をスムーズに運営するために継続的に必要となる資金のことを指します。例えば、商品の仕入れ代や家賃、人件費、広告費など、どれも事業活動を続けるうえで欠かせない費用です。特に、売上が安定するまでの間は、支出が先行し、資金繰りが厳しくなることもあるため、計画的な資金準備が不可欠です。
運転資金の考え方
運転資金には様々な分類方法がありますが、変動するかどうかという観点では、変動費と固定費に分けられます。
変動費
変動費とは、売上が増えたり減ったりすることによって、変動する費用のことを指します。たとえばカフェの場合では、売上が多くなるほどコーヒー豆(材料費)をたくさん仕入れなければなりません。また、容器やストローなど包材の消耗品にも、販売した分のコストがかかります。このように、売上の増減によって変動する費用を変動費を言います。
- 仕入れ費、材料費
- 外注費
- 運送費
- 消耗品費 など
固定費
変動費に対して固定費とは、売上の多い少ないに関係なく、毎月一定額の費用がかかるものを指します。カフェを例にあげると、店舗の家賃などは売り上げや営業やに関係なく費用が発生するため、固定費となります。
- 店舗や事務所の家賃
- 広告宣伝費
- オフィス機器や車両などのリース代
- 保険料
- 水道光熱費
- 人件費
- 減価償却費
固定費には変動するものも
固定費のなかには、広告宣伝費や水道光熱費、人件費など、必ずしも一定額とはならないものも含まれています。少しわかりにくいですが、固定費については以下のように覚えておきましょう。
運転資金の種類
運転資金は、用途や使用目的によって、以下のようにも分類されます。

経常運転資金
日々の業務を継続するために必要な資金で、一般的な運転資金です。安定した事業運営のために不可欠な資金です。
増加運転資金
事業の成長や売上が増加している時に必要となる運転資金です。例えば、売上が増加すると材料や商品の仕入れを増やす必要があります。売上増加に対応する人件費もかかります。それに応じた資金が必要になり、増加運転資金を投入するという流れになります。
減少運転資金
増加費用とは反対に、売上の減少に伴い必要となる資金です。売上は減っていても、家賃や人件費などの固定費はかかります。その際には減少運転資金が必要となります。ただ、いつまでも減少運転資金を投入するわけにはいかないので、早めに売上アップや人件費削減など対策を行う方がいいでしょう。
季節性運転資金
季節的な需要変動に対応するために必要な資金で、特定の時期に仕入れや人件費が増える業種(例:衣料品業界や食品業界)に多く見られます。以下のようなものが挙げられます。
- バレンタインやクリスマスなどに増加する仕入れ費
- 賞与時期の人件費
毎年必要となる項目が多いので、予測を立てやすいとも言えます。
設備資金との違いについて
運転資金は継続的、設備資金は一時的
設備資金との違いについては、しっかり押さえておきたいポイントです。一言で説明すると、継続的に必要となる運転資金に対し、設備資金とは一時的に必要となる資金のことです。混同されやすい違いについては、以下のようなポイントがあります。
運転資金 | 設備資金 |
・継続的に使う資金 ・現在の会社運営のために使う資金 ・損益計算書の「費用」に計上されることが多い ・資金の用途は柔軟性がある | ・一時的に必要な資金 ・将来の会社運営のために使う資金 ・貸借対照表の「固定資産」に計上されることが多い ・資金の用途は限定的。前もって決まった設備しか利用できない |
- 店舗や事務所の敷金・礼金
- 店舗や事務所の改装費
- 土地・建物、店舗、車両、機械の購入
- 事務所や店舗内の設備や備品(パソコン・コピー機・事務用品など)
- 無形資産(ECサイト構築や自社ホームページ作成費用など)
創業融資における運転資金と設備資金の違いについては、こちらの記事にもまとめていますのでぜひご参考ください。

運転資金として融資されたお金を設備資金に使ってもいいの?
「設備資金」として融資を受けた後に、申請していたものを買わなかったり、安いものにしたりして残りを「運転資金」に使うのは禁物です。その事実が金融機関に判明すると、「資金使途流用」となり、一括返済などのペナルティが課されることがあります。最悪の場合、二度と融資が受けられないほど信用を失墜することもあるので注意してください。
起業に必要な運転資金の相場
起業に必要な運転資金の相場は売上の3~6ヶ月分
では、起業の際に必要な運転資金の相場はどの程度でしょうか。一般的に月商(売上)の3~6ヶ月程度です。
月の売上が100万円の場合は300万~600万円が運転資金として準備できるとよいでしょう。ですが、職種や事業形態によって、仕入れから売掛金の回収などの手元にお金が入ってくる時期は異なります。そのため、必要な運転資金も異なってくることになります。
各自の事業状況によるため、以下はあくまで目安となりますが、各業種ごとの運転資金の特徴を表にまとめました。
業種 | 運転資金の目安(月商換算) | 特徴・理由 |
---|---|---|
製造業 | 3〜4か月分 | 原材料仕入れ(支出)〜回収(入金)まで時間がかかる。受注生産型はさらに多く必要。 |
卸売業 | 2〜3か月分 | 在庫管理・信用販売に対応する資金が必要。 |
小売業 | 1〜2か月分 | 商品の回転が早く現金売上も多い。季節商材は多めの資金確保が必要。 |
サービス業 | 1〜2か月分 | 在庫がないため少なめで済むが、人件費などの固定費に備えが必要。 |
創業計画書(事業計画書)への書き方を確認しよう
起業の際には売上を予測することは難しいかもしれません。起業当初は予測できない出費や突発的な出費も発生するものです。実際に創業計画書(事業計画書)を作成することで、少しでも具体的に計画し、見通しをたてることができるはずです。
日本政策金融公庫の創業計画書
実際の記入方法はこちらの記事でも記入例を用いて説明していますでの、ぜひご確認ください。
減額対象にされやすい運転資金
融資を受ける際、運転資金のなかでも、減額対象にされやすいものがあります。つまり、金融機関が「切実に必要」と判断されにくいものです。
実際には必要であるはずの上記の費用ですが、融資の観点では認められにくいようです。他の経費を主体に記入するようにおすすめします。
運転資金の計算
1か月にかかる運転資金を計算してみましょう。以下の計算式で算出することができます。
たとえば、
売掛金 200万円
棚卸資産 300万円
買掛金が 100万円
だった場合の運転資金は“200万円+300万円-100万円=400万円”と求めることができます。正確にお金の流れを確認するには、資金繰り表を作成するとよいでしょう。日本政策金融公庫のサイトでも、フォーマットをダウンロードすることが可能です。
運転資金調達のポイント
調達までのスケジュールを確認しよう
運転資金に限らない話ですが、資金調達までのスケジュールは非常に重要です。融資が通り、入金がいつになるかを確認することはもちろんですが、
- ビジネスモデルを詰めて考える
- 自己資金を準備する
- 取引先の見通しをつける
- 収支予測をたてる
- 店舗などが必要な場合、物件のめどをつける
上で例をあげただけでも、資金調達までに行うべきことは山ほどありますよね。資金が必要になってから準備をはじめても間に合わないケースもあるので、前もって計画することが重要です。
自己資金はしっかり準備しよう
いざ融資を受けようとしたタイミングで自己資金が少ないと、融資を受けれる金額も減ってしまいます。自己資金は資金調達の際に非常に重要なポイントとなるため、しっかりと準備を行いましょう。
起業に必要な自己資金の貯め方などについては、こちらの記事もご参照ください。

書類作成が重要(金額などの数字は根拠あるものを)
融資は基本的に面接と審査を行った上で結果が決まることになるので、万全の態勢で挑みましょう。
何より重要なのが、念入りに作り込んだ創業計画書や事業計画書です。申し込みの際の必須書類として創業計画書を提出しますが、これだけでは記入できる内容が少ないため、別途事業計画書を用意します。これらの書類の出来が結果を左右するといっても過言ではありません。わかりやすく、なおかつしっかりとポイントをおさえた内容を記入しましょう。
創業計画書の書き方についてはこちらの記事もご一読ください。

専門家にチェックしてもらうと安心
例えば、創業融資で最も利用されている日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」は、一度審査に落ちてしまうと再審査まで最低半年は待たなくてはなりません。時間を無駄にしないためにも専門家のサポートを受けることをおすすめします。弊社コマサポでも創業融資代行のサポートを行っております!創業融資・公庫融資の申請代行サポートならコマサポ
運転資金の調達方法
実際には起業時に自己資金のみで資金を調達できる方は少ないと思います。融資やその他の方法をご紹介します。
融資による調達
日本政策金融公庫
比較的低金利、要件を満たせば無担保・無保証で融資を受けられるという点で最もおすすめな資金調達方法と言えます。日本政策金融公庫は、政府が100%出資する金融機関 で、創業時の資金調達において最も利用される融資機関の一つです。特に、自己資金が少ない起業家や、信用力がまだ十分でない事業者に対しても積極的に融資を行っています。
「日本政策金融公庫が他の融資元よりおすすめな理由」について、こちらで解説しておりますので、ぜひご覧下さい。創業融資は日本政策金融公庫がおすすめ!
地方自治体(制度融資)
制度融資は、地方自治体・信用保証協会・金融機関が一体となって提供する融資制度です。自治体により異なりますが、保証料の補助などもあり、比較的利用しやすい融資です。日本政策金融公庫に次いでおすすめできます。
ですが、それぞれの機関で審査が必要なため、融資までに時間がかかる点はデメリットと言えます。
信用金庫・信用組合
信用金庫や信用組合は、地域密着型の金融機関であり、地域の中小企業や個人事業主への融資に力を入れています。会員制の金融機関であり、地元の事業者であることが条件となることが多くあります。融資審査が比較的柔軟で、起業家の状況に応じた対応をしてくれますが、信用金庫や信用組合は地域ごとに融資の条件が異なるため、事前に相談して詳細を確認しましょう。
融資以外による調達
クラウドファンディング
通常の融資とは異なりますが、資金調達の手段として クラウドファンディング も注目されています。クラウドファンディングは、不特定多数の人から少額ずつ資金を集める方法 で、銀行融資とは異なるメリットがあります。
ただし、目標金額に到達しない場合は資金を受け取れない『オール・オア・ナッシング型』 の仕組みが多いため、成功するためのマーケティング戦略が重要になります。
補助金・助成金
補助金や助成金による調達は、条件があるため、すべての事業者が対象とはなりませんが、もし条件に合致する場合は積極的に利用しましょう。補助金や助成金について、こちらの記事で詳しくまとめていますので、ぜひご確認ください。

弊社コマサポでも補助金 申請代行サポートを行っております。
お気軽にお問い合わせください。
まとめ
今回は、起業に必要な運転資金にスポットをあてて説明しました。ポイントは以下の通りです。
- 運転資金は変動費と固定費に分けられる。
- 運転資金には、経常運転資金、増加運転資金、減少運転資金、季節性運転資金などの種類がある。
- 設備資金との違いは、運転資金は継続的に使用する資金であることに対し、設備資金は一時的に必要となる資金である。
- 起業に必要な運転資金の目安は売上の3~6ヶ月分
- 資金調達については専門家にチェックしてもらえば融資獲得率アップで安心。日本政策金融公庫の融資がおすすめ。
起業時に必要なお金は効率よく準備したいですね。コマサポでも創業時の資金調達サポートを行っていますので無料相談にお気軽にお問い合わせください。
「コマサポの創業サポートナビ」を運営する駒田会計事務所は、これから創業される方・創業5年以内の皆様に対して、創業時における資金調達のサポートを行っております。日本政策金融公庫の創業融資の支援を始め、多くの創業融資のサポート実績があります。
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駒田会計事務所【コマサポ】 代表 駒田裕次郎 税理士・公認会計士