「マル経融資」と聞いて、いま一つぴんと来ないという方も少なくないと思います。
そこで、今回は「マル経融資」について詳しく説明していきたいと思います。
この記事を読んでいただき、少しでもマル経融資について、ご理解をしていただければ幸いです。
目次
「マル経融資」とは
小規模事業者の方々の経営をバックアップするために商工会議所の推薦にもとづき無担保・保証人不要で融資を受けることができる日本政策金融公庫の融資制度です。
実際に融資を行うのは日本政策金融公庫になりますが、商工会議所を仲介して申請が必要になります。そのため「商工会議所からお金を借りる方法」としてご存じの方もいるかもしれません。
マル経融資の正式名称は「小規模事業者経営改善資金」と言います。この名称からもわかるように中小企業を対象にしている融資制度となります。
通常の日本政策金融公庫の融資において融資枠が一杯となっている場合でも、マル経の融資枠は別枠となっているため、融資を受けられる可能性が十分にあります。
次に「マル経融資」の制度内容を紹介します。
通常枠
融資限度額
・2,000万円
担保/保証人
・不要(信用保証協会の保証も不要)
返済期間
・運転資金7年以内(据置期間1年)
・設備資金10年以内(据置期間2年)
融資対象(以下のすべての要件を満たす方)
・従業員20人以下(宿泊業と娯楽業を除く商業・サービス業は5人以下)の法人・個人事業主
※「常時使用する従業員」にパート・アルバイトは含まれる一方、会社役員や個人事業主本人は含まれません。
・商工会議所や商工会の経営指導を6カ月以上受けている小規模事業者
「経営・金融指導」と聞くと少しドキッとしますが内容はいたってシンプルなものです。
経営指導では、経営指導員と呼ばれる方が、経営改善に役立つアドバイスや指導を行なってくれます。
寧ろ指導を受ける側にとってはありがたい事と言えるかもしれませんね。
・最近1年以上、同一会議所の地区内で事業を行っている
※マル経融資は会社立ち上げのための資金としては利用できません。このあたりも創業融資とは違います。
・商工業者であり、日本政策金融公庫の融資対象業種を営んでいる
※商工業者であっても日本政策金融公庫が融資対象外としている業種の場合は融資が受けられません。
日本政策金融公庫が融資対象外としているのは以下のとおりです。
- 郵便局
- 銀行業
- 賃金業
- 金融商品取引業
- 商品先物取引業
- クレジットカード業
- 保険業
- 競輪・競馬
- 場外馬券売場・場外車券売場
- パチンコ業
- ソープランド業
- 集金業
- 取り立て業
- 福祉事業所
- 社会保険事業団体
- 更生保護事業
- 政治・経済・文化団体
- 農業・林業・漁業
- その他風俗や娯楽を提供している業種
・税金(所得税、法人税、事業税、住民税等)を完納している
マル経融資に申し込む際には法人税や事業税、法人住民税の領収書や納税証明書の提出が求められます。
改めて、見てみると意外と要件が多いですね。
しかも、いずれかではなく「すべて」の要件を満たす必要がある点に注意が必要です。
融資利率
「1.45」%(2024年11月1日現在)
※融資利率は金融情勢により変わることがあります。
このように、非常に低金利での資金調達が可能になります。
資金使途
【設備資金】
仕入資金、掛金・手形決済資金、給与・ボーナスの支払い、諸経費等の支払い
【設備資金】
店舗・工場改装、営業車両購入、機械・設備・什器等の購入
設備資金についてはこちらの記事で詳しく紹介しています。
拡充措置
「通常枠」とは別枠で「拡充措置」というものがあります。
これは令和6年能登半島地震関連など、通常枠とは別枠での取扱いになります。
融資限度額
・別枠1,000万円
担保/保証人
・不要(信用保証協会の保証も不要)
返済期間
・運転資金7年以内(据置期間3年)
・設備資金10年以内(据置期間4年)
融資対象
・通常枠の要件を満たしていること
・被害証明書等の発行を受け、次のいずれかに該当する事業者
①直接被害を受けた方
②直接被害を受けた方と一定の取引がある方
融資利率
①直接被害を受けた方
・当初3年間のみ通常枠金利の-0.9%(2024年11月1日時点)
②直接被害を受けた方と一定の取引がある方
・当初3年間のみ通常枠金利の-0.5%(2024年11月1日時点)
必要書類
個人事業主の方
- 事業概要申告書
- 個人情報利用に関する同意書
- 事業計画書(1,500万円以上の場合のみ)
- 決算書・確定申告書(前年、前々年分)
- 税金の納税証明書もしくは領収書(所得税・事業税・住民税)
- 見積もり書・カタログ等(使用使途が設備資金の場合のみ)
- この他に、不動産登記簿謄本や固定資産評価証明書、賃貸借契約書、許認可業務の許認可書のコピーが必要になる場合もあります。
事業計画書の書き方についてはこちらの記事で詳しく紹介しています
法人の方
- 事業概要申告書
- 個人情報利用に関する同意書
- 事業計画書(1,500万円以上の場合のみ)
- 決算書・確定申告書(前期分、前々期分)
- 残高試算表(決算後6カ月以上経過している場合のみ)
- 税金の納税証明書もしくは領収書(法人税・事業税・法人住民税)
- 商業登記簿謄本(履歴事項全部証明書)
- 見積もり書・カタログ等(使用使途が設備資金の場合のみ)
- この他に、不動産登記簿謄本や固定資産評価証明書、賃貸借契約書、許認可業務の許認可書のコピーが必要になる場合もあります。
個人事業主の方と法人の方では、準備する書類が異なりますので、注意しましょう。
マル経融資の審査実行までの流れ
マル経融資を受けるまでの流れは以下の通りです。
- 商工会議所・商工会の経営指導員へ相談
- 審査会の審査を受ける
- 商工会議所・商工会の推薦を受ける
- 必要書類を準備して申し込みをする
- 日本政策金融公庫の審査を受ける
- 融資の決定・実行
まとめ
「マル経融資」は申請要件も多ければ、必要書類も少なくはないですね。
公庫融資を利用する方の中には税理士のサポートを受ける方が少なくありませんが、やはり「マル経融資」を受ける際にも専門家に依頼することをおすすめします。
資金調達を得意とする税理士に相談することで、融資を受けられる可能性が高まります。
また、サポートを受けることで、書類作成など融資にかかる手間が大幅に軽減されることになります。
成功報酬を支払ったとしても、準備の手間が大幅に軽減されるのは魅力的ですよね。
必要な成功報酬を事前に確認した上で、ぜひ専門家への依頼を検討してみてください。