公務員として働いている方のなかには「ワークライフバランスを実現した働き方をしたい」「起業して収入を増やしたい」と考えている方も多いのではないでしょうか。
公務員には法律上「副業禁止規定」が定められており、基本的には会社を設立することは許されません。
しかし実際には、法人の種類や業種、報酬の有無といった条件によって、副業や会社設立が許可される場合もあります。
また、2025年の施政演説では、石破首相が地方公務員の兼業や副業を促す方針を示しました。今後、地方公務員がより兼業をしやすくなる環境が整えられていくことでしょう。
本記事では、公務員の起業についてご紹介します。
公務員で独立起業に興味のある方、この記事を見て少しでも参考にしていただけますと幸いです。
弊社でも創業支援・開業サポートを行っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
目次
公務員は副業禁止?
国家公務員が副業できない理由
国家公務員は、国家公務員法第96条第1項により
「国民全体の奉仕者として、公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当たっては、全力を挙げてこれに専念しなければならない」
とされています。
国家公務員は国や国民のために働き、その職務を全うする必要があるため、副業で報酬を得る行為は慎まなければなりません。
そして、守るべき服務規律として、副業・兼業に関して以下のように定められています。
- 私企業からの隔離(国家公務員法第103条)
- ほかの事業または事務の関与制限(国家公務員法第104条)
営利企業の役員等になる場合は人事院からの承認を、営利企業以外での副業を行う場合は内閣総理大臣および所轄庁の長からの承認を得ることが必要です。承認を得られるケースは少なく、基本的に副業はできないと言えます。副業の禁止は報酬の有無を問わず規定されており、営利企業の役員兼業については、名義のみでも禁止です。
さらに、国家公務員が副業できない理由として、副業禁止を裏付ける3つの原則についても理解しましょう。国家公務員法(第99〜101条)では、以下の3つ(以下、副業禁止の三原則と呼ぶ)が定められています。
- 信用失墜行為の禁止
- 職務専念の義務
- 守秘義務
この原則に従うと、「国家公務員としての信用や職務専念、守秘義務の観点から、国家公務員の副業が規制されている」と解釈できます。
地方公務員が副業できない理由
地方公務員も、市民のために働く奉仕者としての役割を担っています。そのため、国家公務員と同様に、基本的には副業ができません。その根拠は地方公務員法であり、第38条には営利企業等の従事制限が定められています。
さらに、地方公務員法第33〜35条では信用失墜行為の禁止や職務専念、守秘義務についての定めがあり、国家公務員法と同様に副業禁止の三原則が盛り込まれているのはポイントです。
このように、地方公務員の副業も規制されています。
地方公務員の兼業が促進される方針が示されました【2025年3月】
2025年始の施政演説で、石破首相が以下のように、地方公務員の兼業・副業について言及しています。
人口減少下においては、官民が連携した人づくりや公教育の再生・改革により、一人一人が持つ可能性を最大限引き出すことが必要です。そのために大事なことは、教育の内容と質であり、子供たちをどのように育てたいのかを明確にすることです。知識や能力だけでなく、歴史や文化、地域や周りの人を大切にし、行動する力を有した人材や、大学や農業・工業高校等における観光等の地域の魅力やニーズを捉えた産業やサービスを支える人材を育成します。教職員の働き方改革や給与面を含む処遇改善等を進めます。
これらの取組を応援するため、地方公務員の兼業・副業の弾力化、会計年度任用職員の在り方の見直し等により、地域の中の方々が力を発揮できる環境を整備します。国の職員が、課題を抱える市町村に寄り添って、顔が見え、熱が伝わる伴走支援を行う仕組みを新たに始めます。2025年1月 第217回国会における石破内閣総理大臣施政方針演説より
また、総務省は地方公務員の兼業や副業を促進する方針を示しています。現行の原則禁止が緩和され、地域貢献や課題解決に繋がる活動を主として、営利企業から報酬を得て働くことができるようになる見込みです。
総務省は地方自治体向けに、今後「どのような業務が許可されるか、またその考え方や具体的な事例」が示される予定です。例えば、町おこしや移住者支援、過疎地におけるコンビニ業や新聞配達など、地域住民の生活サポートに不可欠な内容が想定されています。
公務員を続けながら起業する方法はある?
法律上の制約により、公務員は副業が原則禁止とされています。しかし、限定的ではあるものの、以下の方法であれば起業が可能です。
公務員としての職に就いたまま起業するには、以下の方法が考えられます。
- 所属先の許可を得る
- 非営利企業として報酬を受け取らない
- 家族を役員にする
公務員が自らの名義で会社を設立する場合、所属する組織から許可を得る必要があります。許可を得るためには、業種や業務内容、勤務先のルール、上司の考え方などを考慮し、提案を行うことが重要です。
例えば、地域社会の活性化を目指すNPO法人を設立した場合、公務員としての経験を活かして活動できます。この場合、所属先の許可が必要になることが多いです。
また、一般社団法人を設立し、教育や文化などの振興に関わる活動を行うことも一つの方法です。こちらも所属先の許可を取りましょう。
さらに、家族名義で会社を設立し、自身は役員に名を連ねずに運営に関わる方法もあります。ただし、家族が経営に関わることで、公務員としての職務との間に利益相反が生じる可能性があります。また、公務員本人が直接関与していないとしても、家族が経営する企業との関係が公になった場合、信用問題が生じるリスクがある点に注意が必要です。
公務員が起業する際には、職務の公正性や専念義務を損なわないような配慮が重要です。また、所属先の許可を得ることや、設立後の運営においても、公務員としての立場を考慮した行動が求められます。
さらに、起業を成功させるためには、公務員特有の制約を理解し、それに適した方法の選択が不可欠です。こちらの記事では起業の流れについて説明していますのでご参照ください。
https://www.sogyo-support.biz/blog/sougyo/starting-a-business-1018/
公務員が起業するメリット
公務員として培った経験や能力は、独立起業の際に活かすことができます。
たとえば、税務署や市役所の会計系の部署に所属していた場合は、会計や経理のスキルが身につくため、独立起業の際にも役立つでしょう。また、自衛官や警察官、消防官として働いていた場合は、力仕事や夜間帯の仕事に活かせます。
- 経験や能力を活かせる
- 収入アップのチャンスがある
- 働き方の自由度が高まる
- 公務員試験に合格した実績があることで、顧客や取引先によいイメージを与えやすい
資金調達方法について
公務員の起業に限った話ではないのですが、開業資金のための資金調達の方法には、以下のような方法があります。
- 自己資金
自身が所有する資産を利用する資金調達方法です。自己資金が多いと多くの融資を受けやすくなるというメリットもあります。自己資金の説明はこちらの記事で詳しく説明しています。

- 親・親戚・友人に貸してもらう。
公式な手続きや審査が不要なため、迅速に資金を調達できるほか、低金利または無利息で借りられることが多く、返済期間についても柔軟に設定できる場合が多いです。 - 日本政策金融公庫等の金融機関から創業融資を受ける。
日本政策金融公庫の融資についてはこちらの記事で詳しく説明しています。

- ベンチャーキャピタル
将来成長が見込めるベンチャー企業やスタートアップ企業の将来の成長を見込んで投資する組織のことです。資金を返済する必要はありませんが、企業が成長や上場したときに株式を売却することで資金を回収します。 - エンジェル投資家
将来成長が見込めるベンチャー企業やスタートアップ企業に出資する個人投資家のことです。投資したお金を企業から直接回収することはせず、将来そのベンチャー企業が株式上場した際の出資金のキャピタルゲインを得ることを目的としている場合が多いです。
このうち、自己資金で開業できればベストなのですが、必要となる資金を全額自己資金で用意できる方は少数だと思います。
また、人脈や家族の力を利用し、「他人からの出資」によって開業資金を賄える方もかなりの少数だと思います。
現実的には、日本政策金融公庫などの金融機関や信用金庫からの創業融資を検討することが多くなると思います。
それでは、具体的に融資を受ける方法について見ていきましょう。
融資先の例
下記は、創業や開業時に利用可能な融資先の例です。
【日本政策金融公庫】
創業・継承、設備投資、研究開発、海外展開など、様々な事業目的に合わせた融資制度がある機関です。特に創業時は積極的な感じが見受けられます。
詳しくは、こちらをご覧ください。
【保証協会付き融資】
信用保証協会(東京都の場合)が保証人となって金融機関から融資を受ける制度です。
詳しくは、こちらをご覧ください。
【日本政策金融公庫で飲食店の起業・開業(東京都)】
※諸条件はありますが、東京都飲食業生活衛生同業組合に加入することで、金利等の優遇を受けられる場合があります。
まとめ
今回は、「公務員の起業」について、スポットをあててみてきました。本記事が、副業を通じてワークアンドバランスの実現めざすお手伝いとなることを願っております。
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駒田会計事務所 代表
税理士・公認会計士 駒田裕次郎
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